パパが買うべき血圧計。妊娠高血圧症候群について知る。
パパから見た妊娠高血圧症候群
(夫)高血圧って太ってて生活習慣が悪い人がなるやつでしょ。うちの妻は大丈夫だよ。
→妊娠高血圧症候群は、誰でもなる可能性があります。痩せていて食生活を気にかけている人でも起こります。
(夫)うちの妻高血圧あるみたいだけど、妊娠してから血圧落ち着いている見たいだから大丈夫だな。
→一般的に妊娠中は一旦血圧が下がります。後半にかけて再度上がってくるので油断はできません。
(夫)妊娠高血圧って言われた!? 減塩減塩!運動もしなよ!
→食生活の見直しや運動はもちろん大事ですが、一般的な高血圧とは病態が異なるので、いくら生活を気をつけても悪くなります。
(夫)やっとお産が終わった。妊娠高血圧って言われた見たいだけど出産終わったし大丈夫だな。
→妊娠が終わったらすぐ良くなる訳ではありません。産後も注意が必要です。また将来的な高血圧のリスクもあるので引き続き注意が必要です。
(夫)前のお産の時に妻が妊娠高血圧って言われました。次のお産の時にできることはないですかね?
→妊娠初期から飲み薬を飲んでもらうことでリスクを低減できる可能性があります。
妊娠高血圧症候群は誰でも起こりうる妊娠中の合併症で、特に初めてのお産や高齢の方などがリスクと言われています。
一般的に言われている高血圧とは病態が違うので、パパも妊娠高血圧症候群について理解し、奥さんを支えてあげてください。
妊娠高血圧症候群とは? 何が原因なの?
妊娠きっかけで血圧が上昇してしまう病気です。
ではなぜ妊娠きっかけで血圧が上がってしまうのでしょうか?
答えは「胎盤」にあります。
胎盤とは赤ちゃんとお母さんを繋ぐ大切な臓器です。
胎盤は妊娠初期に作られるのですが、この胎盤の形成がうまくいかないことが妊娠高血圧症候群の原因です。
胎盤がうまく作られないと、赤ちゃんにうまく酸素や栄養を届けられなくなってしまいます。
しかしお母さんは本能的に血流を届けようと、血圧を上げて代償します。
それだけでなく、胎盤がうまく作られないことで血管を傷つけてしまう物質が多く作られてしまい、これがお母さんの免疫に異常をきたしたり、お母さんの血管を傷つけて血圧を上げてしまいます。
つまり胎盤が悪さをしているので、食生活が問題なくても発症するものは発症するのです。
これを読んで、じゃあ妊娠高血圧症候群を発症するかは妊娠初期に決まっていると言うこと?って思った人、鋭いです。
そうなんです。
あなたの奥さんが妊娠高血圧症候群を発症するかは、妊娠初期に既に決まっているんです。
妊娠高血圧症候群は予想出来る?
妊娠高血圧症候群の病態を理解頂けたでしょうか。
「胎盤がうまく作られているかどうか」が分かれば、妊娠高血圧症候群を発症するかを予想できますね。
具体的には、お母さんの背景(年齢や妊娠初期の血圧、前回のお産の経過など)に加えて、血液検査で血管を傷つける物質がどれだけ出ているか、超音波検査で子宮を流れる血流の流れやすさなどを見ることで、今回の妊娠でどれくらいの確率で妊娠高血圧症候群を発症するのかを、ある程度予想ができるのです。
リスクが高いですよ!と結果が出た場合にはどうなるでしょうか?
実はまだ日本では保険適応ではないのですが、アスピリンという薬を飲んでもらって発症を予防することがあります。
このアスピリンという薬は、一般的に脳梗塞や心筋梗塞などで使う血をサラサラにする薬です。
それらの疾患に使用する量と比較して、少ない量を妊婦さんに飲んでもらいます。
血をサラサラにする=血の流れを良くしてくれるので胎盤の循環も良くなり、妊娠高血圧症候群の発症の予防につながるというメカニズムです。
妊娠高血圧症候群の治療は?
妊娠高血圧症候群が起こらないように予防する手段についてお話ししましたが、実は一度発症してしまった場合にはお薬でどうすることもできません。
胎盤が悪さをしているので胎盤がなくならない限り悪くなる一方の怖い病気なんです。
胎盤を取り除く、つまり妊娠を終わらせることが根本的な治療になります。
ただ早い週数で発症してしまった場合、まだまだ赤ちゃんは未熟なので出来るだけお腹の中にいてほしい。
そのために降圧薬などを使いながら出来るだけ妊娠週数を稼ぎます。
しかし血圧が下がりすぎると胎盤を流れる血流も減ってしまい、赤ちゃんがしんどくなってしまう危険性もあります。
そもそも胎盤の形成がうまくいってないので、お腹の中の赤ちゃんは小さく、ストレスに弱いことが多いです。
つまり妊娠高血圧症候群を発症した場合の管理方法は、お母さんもしくは赤ちゃんがこれ以上は危険!と判断するギリギリの週数まで頑張って稼いで、その時点で妊娠を終了することです。
(陣痛を起こす薬を使って下からのお産を目指すか、帝王切開になるかは状態によります)
パパも絶対に知るべき妊娠高血圧症候群の合併症
・お母さん、赤ちゃんに起こる合併症
常位胎盤早期剥離
何か一つ覚えておくならこの合併症を覚えておいてください。
通常、胎盤は赤ちゃんが産まれてから子宮から剥がれます。
それが、妊娠中赤ちゃんがお腹の中にいるのに、胎盤が剥がれてしまう病気を常位胎盤早期剥離と言います。
胎盤は、お母さんから赤ちゃんに酸素や栄養を送り届ける赤ちゃんにとっての命綱のようなものです。
それが剥がれてしまうということは、赤ちゃんにとっては大大大ピンチなんです。
急に酸素がもらえなくなりしんどくなってしまい、最悪の場合胎児死亡につながります。
実は常位胎盤早期剥離はお母さんにとっても大大大ピンチです。
胎盤が剥がれたところから大出血することがあります。
また、常位胎盤早期剥離の出血の特徴として、出血を止めようとする体の仕組みが過剰に働いてしまうことがあります。
そうすることで、血液を固める成分が全身で過剰に使われてしまい、本来血を止めたい所で使えず、出血が止まらない事態に陥ることがあります。
お母さんにとっても赤ちゃんにとっても本当に怖い合併症が常位胎盤早期剥離。
妊娠高血圧症候群の患者さんでは、特にリスクが高くなるため注意が必要です。
症状として、「持続的な下腹部痛、出血、胎動減少」があります。
この3つの症状いずれかがあった場合には、すぐに救急車呼んででも早く病院を受診してください。
お母さん、赤ちゃんの生死に関わります!!
・お母さんに起こる合併症
子癇発作(しかんほっさ)
痙攣が起きます。
文字で書くとそんなものかと思ってしまうかもしれませんが、一度見るとこれは大変なことが起きていると思います。
目は上を向き、手足をガクガクさせて、呼びかけにも反応しません。
痙攣を止めないと脳に障害が残ってしまう場合もあります。
子癇発作が起こる前には、頭痛や目がチカチカする症状が出ることがあると言われています。
脳出血
急激な血圧の上昇で脳出血が起こり、手足の麻痺など後遺症が残ってしまう場合があります。
頭痛などの症状を伴う場合もありますが、血圧が高いだけで前兆なく突然起こる場合も多々あります。
HELLP症候群
血液の中の赤血球が壊れ貧血が進んだり、血を止めてくれる血小板が減って出血が止まらなくなったりします。
また肝臓などの臓器にダメージを受けることがあります。
症状としてはみぞおちの痛みや吐き気などがあります。
・赤ちゃんに起こる合併症
胎児発育不全
胎盤の形成がうまくいっていないため、赤ちゃんの成長がうまくいかず平均と比べて小さめちゃんであることが多いです。
小さい赤ちゃんは色々なストレスに弱く、お腹の中で急にしんどくなってしまったり、最悪の場合胎児死亡となってしまうリスクもあります。
赤ちゃんがしんどくなると胎動が減ることが多いです。
妊娠高血圧症候群と診断された場合には、普段に増して胎動を気にかけるようにしてください。
パパができることは?
① 妊娠がわかったら早めに病院へ(予防の対象になるかもしれません)
妊娠高血圧症候群は一度発症してしまうと妊娠を終了すること以外根本的な治療はありません。
そのため、ならないように予防することが重要です。
妊娠高血圧症候群の発症リスクが高い人として初めてのお産、高齢、双子ちゃん、元々高血圧や糖尿病がある人などです。
そして最もリスクが高い人は、前回のお産で妊娠高血圧症候群を発症した人です。
これらの人は、各種検査をすることで薬の対象となる可能性があるのですが、実は胎盤が形成されてから薬を飲み始めても遅いと言われています。
具体的には妊娠16週を過ぎてから薬を飲み始めても予防できないと言われています。
そのため、妊娠がわかったら早めに医療機関を受診することが重要です。
② 早期発見のために血圧計を購入する
妊娠高血圧症候群は一度発症すると数日単位でみるみる悪くなることがあります。そのため、早期発見が大事なんです。
早期発見のために何が出来るでしょうか?
実は、頭痛などの症状は血圧がある程度高くないと出てこない症状です。
無症状のまま血圧が高くて気付かれることが多いです。
妊婦健診は通常1-4週間と間が空いてしまうため、気がつけるチャンスが少ないです。
そのため家の血圧が非常に重要です。
リスクが高い人、健診の血圧がちょっと高めだよと言われた人は、血圧計を買って家の血圧を測るようにしましょう。
そして、上の血圧が140以上または下の血圧が90以上の場合には、速やかに病院を受診するようにしてください。
③ 合併症に気がついて病院に連れて行く
妊娠高血圧症候群の合併症の怖いところが、お母さんが重症で救急車も呼べないことがあるということです。
子癇発作という痙攣が起きた時、常位胎盤早期剥離が起きてお腹が痛過ぎて動けない時…
そのため身近にいる人、つまり旦那さんの力が絶対必要なんです。
また一番気をつけなくてはいけないのが、実は産後です。
合併症をきたすほどの高血圧がある人は、妊娠中であれば入院していることが多いです。
しかし、産後についてはある程度血圧が高くても、降圧薬を処方して家で様子見てもらうことが多々あります。
またパパもお子さんのことばかりに気を取られてしまい、ママの異変に気がつけないことがあります。
そもそもママも忙しくて血圧を測っていないことがよくあります。
妊娠高血圧症候群は、妊娠が終わってすぐに良くなるわけではありません。
産後しばらくは注意が必要な時期が続くので、パパは異変を見逃さないようにしてください。
そして、妊娠高血圧症候群は将来的な高血圧のリスクと言われています。
高血圧を放置すると脳出血や心臓の病気などなど、色々な病気の原因になります。
健診は必ず受けるよう勧めてください。
まとめ
① 妊娠高血圧症候群とは胎盤の形成がうまくいかないことが原因であるため、一般的な高血圧とは病態が異なります。
② 胎盤がうまく作られているかどうかを血液検査や超音波検査で予想して、リスクが高い人にはアスピリンという薬を飲んでもらい、妊娠高血圧症候群の予防をする場合があります。
③ 妊娠高血圧症候群は一度発症すると悪くなる一方の病気です。根本的な治療は妊娠の終了しかありません。管理方法は、お母さん、赤ちゃんがこれ以上は危険というギリギリの週数で妊娠を終了することです。
④ 妊娠高血圧症候群の合併症はお母さんにとっても赤ちゃんにとっても怖いものばかりです。特に常位胎盤早期剥離の3つの症状(持続的な下腹部痛、出血、胎動減少)は覚えておきましょう。
⑤ パパができることとして、妊娠がわかったら早めに病院へ連れて行くこと、血圧計の購入、合併症について学び異変があれば病院へ連れて行くことです。
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