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気持ちがレイムじゃモノホンプレイヤーにはなれねぇ

眠れない夜があった。
仕事・お金・家・やりたいこと。そういったあらゆるものに対する不安が一斉に心へ流れ込んでくるような夜。
そんなときは決まって自分の過去の発言や行動に対する後悔が、水になかなか溶けない片栗粉のようなドロッとした塊で降ってくる。

一時は月に1度くらいの頻度で来ていたものが最近は見ていなかったのでもうないかと思っていた。
便宜的に男の子の日と呼ぶようにしている(物理的な痛みはないだけましなんだろうけれど)。

良くないことはまとまってやってくることが多いのはなぜだろう。
大学時代にすし屋でバイトをしていた時に、一度に頼むんじゃなくてばらけて頼めばいいのに。と思っていた感情に近い。

2024年1月31日、仕事をクビになった。
幸いなことに別の案件はあるけれど、受託先からの突然の告知は心臓をグッとつかんで離さない。
初めてのことに反発したい想いと後悔が入り混じる。
3月からパートナーとの同棲を考えていた。引っ越しにかかる費用を思うと心の重さが増すのを感じた。

去年から出しているコンペティションはどれも落選していた。
個人的には自信を持っていたものが残っていないという事実は、素人なんだからそんな簡単に受賞するもんじゃないとわかりつつも、悔しいと思ってしまう。
「お前は何にもできないんだ」と淡々と宣告されているような感覚。
先生、うちの息子は助かるんですか。

ぼくの身を案じて「旅に出ようよ」と言ってくれるパートナーがいたけれど、今ある現状を投げ出すような気がして素直に返事ができなかった。

少しでも気分を盛り上げようと聞いたのがBUDDHA BRANDの「人間発電所」だった。
過去に聞いてめっちゃいいなと思っていたこと(もちろん邦HIPHOPの金字塔であることも一つ)、ディグトリオでちょうど取り上げられていたことが理由だったかもしれない。本当になんとなく聞いただけだった。

気持ちがレイムじゃモノホンプレイヤーになれねぇ

深夜のコインランドリーで一人泣いている人がいた。
ぼくだ。パンチ力のあるフックが深くボディに突き刺さった。

You need a heart to play this game

いま必要なのはレイムする心じゃない。
この現状を楽しむハートなんだ。
言葉そのままだったけれど、とにかく深く刺さって火をともした。あの瞬間はきっと忘れない。
歌に救われるという感覚を知った瞬間だった。
グウングウンと音をたて回る乾燥機、その横でビートとともに少しずつ心の湿り気がとれていった。

成仏させてやれない想いや彷徨い歩いている今をまた受け入れようと思った。
もしかしたら自分よりもっと、、、なんて考えもあるかもしれないけれど、今は自分で精いっぱいだ。
人に迷惑をかけて生きてきたことを受け入れる。だってきっとこれからもめっちゃ迷惑をかけるだろうから。

ただ、そこでレイムじゃもったいない。モノホンプレイヤーになれないぜ。
そう伝えてくれる曲があった。
ぜーんぶひっくるめて頑張ろうって。
そして天まで飛ばそう。

その曲が出たのは自分の生まれ年だった。
同じ年に生まれた曲がいつまでも色褪せずに多くの人を前に進めている。
その事実だけでも再び歩き始めるには十分だった。

人間発電所。
火力や原子力よりもパワーのある発電所がそこにあった。

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