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子供達に色の錯覚を感じてもらう。

1年くらい前、娘の保育園での保育士体験記だ。

「パパも早くせんせいやってよ〜」

とせかされ重たい腰をあげ、園の先生に保護者が保育の体験をできる保育士体験を申し込んだ。せっかくやるならと思い、自己紹介がてら簡単プレゼンのためプロジェクターの使用が可能かどうかを先生に聞くと、いいですよと即答。KEYNOTEによるスライドを使った、色の勉強みたいな事は仕事でもやっているし大して苦ではなく、むしろ幼児に対して授業をできるという好奇心も強く持っていた。


「どんなリアクションをするのだろう」「どのうように、言うと伝わるのだろう」「どんなことに興味を持ち、盛り上がるだろうか」みたいな事を知るにはもってこいの機会ある。

スライドを追いつつ解説。
子供達にとって、そもそも色はどのように捉えられているのだろうか。いや、捉えるいうよりかは感じる、と言った方が正しいのか。


まずは自己紹介。
「美容師だけど、チョキチョキしないです」ヘアカラーを塗っている写真を見せると「髪の毛を染めるヒト〜」と声が出たときはヘアカラーをするという事を認識できているんだなと思った。おそらく自分たちのお母さんが髪の毛を染めているという事がわかっている証拠だ。そしてその時に出た言葉。「だからイロハちゃんていうんだー」娘の名前はイロハです。そこに気づけるという事にも驚いた。

絵の具を使った事も保育園ではやっているし、自宅でも絵の具を使って塗り絵をしているだろうから次のクイズはわかるのかな?と。混ぜた事でできた色の結果は知っているだろうが、何色をつくりたくてコレとコレを混ぜるという事はまだできていないのかなとも予想していた。例えば,赤+黄は? 青+赤は? だが意外にも混ぜ合わせる事で何色ができるという事は既にわかっている子が多かったように感じた。スライドを見せながらクイズ形式、このカタチが一番盛り上がるという事はおおよそ想像はできていた。

さて赤+黄+青はどうだろう。この問いは大人でさえも危うい問いである。コレに対してはやや答えにもばらつきが出た。「紫?」「いや黒かな!?」「・・・。」と自信のない様子。ここで個人的に少し感じたのは、幼児の色に対しての認識は赤青黄橙紫緑の6原色と黒と白の無彩色しかないのではないか。茶色は知ってはいるがメモリーの表層にないためすぐには言葉として出てこないのかなとも感じた。

次に伝えたいなと思ったのは、日本の四季だ。季節によって見ている対象の色に違いがあるという事を意識してもらえたらなと思いスライドに加えた。逆を言うと色が無いと季節を感じづらいことも然りだ。保育園のそばには大きな森林公園があるので、普段から桜、新緑、紅葉、雪のある風景を目にしているはず。

でも目論見とは裏腹に、スライドにのせたハチのイラストは好評だったけどおそらく季節というキーワードをどれほど感じてもらえたのかは反応を見る限りは響いていはいなかった。もっとうまく話せていればと反省もあるが,唯一先生には響いていたような気がする。


今回のスライドでもっとも盛り上がるかなと、期待をしていたのが👇のスライド。ヒトの目が引き起こす「同時対比」という錯覚の1つである。

同時対比:2つ以上の色を同時に見たときの色の対比のことをいいます。 2つ以上の色を同時に見ると、それぞれの色が影響しあうために元の色だけで見るときと違う見え方。

ここでぶちあたる1つの壁。それは「錯覚」という言葉。これはさすがに伝わらないと思い、瞬時に「てじな」と表現。

これは誰が見てもこの現象を感じることができるのではないか。

図形中央に配置されているピンクの色に注目して欲しい。隣り合う色がグリーンとピンクの場合、中央のピンクはそれぞれ比較するとどのように感じるか。グリーンの隣にあるピンクなピンクの隣にあるピンクよりもトーン(彩度+明度)が高く感じる。右側のピンクはややグレイ味を感じる。

そして第2の壁。このスライドを子供達に説明する時、言葉にしながら戸惑いを感じた。それは中央のピンクを説明する際に、ピンク同士の彩度の違いをどう説明すべきか。「まんなかのピンクの彩度が違うよね〜」と言ったはいいが、「彩度」の説明をどうすべきかがとても難しいと思った。でもコレを説明できる言葉を持ち合わせておらず瞬時にあきらめ、次のスライドへ。切り替えは早いなと自負。スライド👆では真ん中のピンクが動くという効果がついているので,「てじな」としては成立できたとまたもや自負。

このハートのスライドは、大人が見ても驚きではないだろうか。自分は驚いた。これも人間の目が勝手に引き起こしている錯覚に過ぎない。左はグリーン、右はピンクに見える。この中から、まさかの色が出るとは誰にも想像はできないのではないか。

スライド効果により、グレーのハートが出現。この時の子供達の反応はとてもおもしろかった。「えー!」「わー!」「すごーい!」など。感嘆の声が響き渡った。グレーという色がブルーとグリーンのどちらの隣に配置されるかで見え方がかわる。攻殻機動隊のバトー的に言わせれば,「目を奪われた!!」と言っても過言ではない。この説明はいらないか。でも不思議な感覚である。

わずか10分くらいのプレゼンだったが,自己紹介としてはまずまずのできだっただろうか。終ったあと、何人かの子供達に質問された。「黒と紫はを混ぜると何色になる?」「黄色と黒は?」とかの質問だ。それなりに、色についてこのおじさんが話したんだなという事は伝わった様な気がする。

この体験はとても貴重だった。仕事では10名から多くて100名くらいまでの大人の前で話をする事があるが,ある一定の認識レベルがある上での話だった。だけど、子供ともなると当然知っているだろう言葉の意味の理解がまず必要になるという事。日常レベルでは娘と接しているからその事は理解していたつもりだが,いざ人前に立つ上ではまだその部分での準備が足りてはいなかった。そう思うと、保育園の先生はそこに対する考慮と準備の徹底は素晴らしいなと勉強になった。


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