[連載物] ダブルピン〜その4
渋谷駅までもう数十秒しかない。イヤホンから流れる、ジョン・コルトレーンの「My Favorite Things」はちょうど8分をすぎるところで、コルトレーンのサックスが高らかなに鳴り響き最後の盛り上がりに差し掛かってきている。自分の鼓動もそれに合わせ早くなるのを感じた。
もうここまでくると、自分の中にある親切心みたいなものがじわじわとこみ上げてくる。「伝えなければいけない」という使命。自分の右隣、左斜め前には他の男性の乗客が立っている。彼女にもし声をかけるなら自分は隣の