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[連載物] ダブルピン〜その1
電車は渋谷駅につき、その女性は電車を降りるためにスマホをポケットにいれ態勢を整えた。電車のドアは開き、その女性は自分とは逆の方の階段へと歩いていった。自分は肩を落とし階段を登った。
毎朝、9時17分発の渋谷方面行きの山手線に乗って職場へと向かう。
今日は久しぶりにジョン・コルトレーンでも聞きながら行くことに決めた。
その日は晴れているわけでもない、薄っすらと曇りの天気だった。その時間は通勤ラッシュも終え割とゆったりとした乗車率で、特別な緊張感もない空気感であった。電車の中でスマホを片手に時間を潰す人たちを見ながら電車に揺られたった2駅を何も考えずぼんやりと過ごすのが朝の日課みたいなものだ。その日は何も考えないと言うわけではなく、朝10時からのメーカーとの打ち合わせのことを思い出し、考えていたのだろうか。
ふと眼の前のドアにもたれかかった一人の女性に目に入ってきた。見つめるつもりは無いから、1秒として見たわけではない。だがあるものが目に入り、動物的反射神経でもう一度視線を戻さざる負えなかった。
その女性は見た印象、40歳手前の会社勤めのいわゆるOLであろうか。身なりもオフィスで別段目立つことを意識されていない、端正な印象だ。太っているわけでもなく痩せているわけでもないヘルシーささえ感じる。個性的なという印象からは遠く離れた女性だった。 根元の新生部も4cmくらい伸びている。頻繁には美容室には行かないのであろう。これはあくまでも推測だが、控えめな性格な気がする。
つづく
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