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『ストーンサークルの殺人』M・W・クレイヴン(著)東野さやか(訳)

英国カンブリア州に点在するストーンサークルで次々と焼死体が発見された。犯人は死体を損壊しており、三番目の被害者にはなぜか停職中の国家犯罪対策庁の警官ワシントン・ポーの名前と「5」と思しき字が刻みつけられていた。身に覚えのないポーは処分を解かれ、捜査に加わることに。しかし新たに発見された死体はさらなる謎を生み、事件は思いがけない展開へ…英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールド・ダガー受賞作。

ミステリー、サスペンス、両方イマイチだが、ドラマは最後まで面白いし、何よりティリーのキャラクターが良すぎる。彼女と出会うためだけでも読む価値あり。

地元の名士達が、ストーンサークルのど真ん中で、自身の性器を口に詰められ火炙りにされる、というショッキングな連続殺人を、警察と主人公達が調査してゆく。かなり良いツカミなのだが、素人目にも性的虐待への復讐にしか見えないのに、捜査がその方向を向かないのにはやきもきした。さらに、死体に主人公の名前が刻まれるとか、あきらかにありえない展開にも閉口。犯人身内じゃん! としか思えないよ。

しかし犯人が指し示す手がかりから、過去の事件が明るみに出てきて、権力者がそれをもみ消そうとするドラマが現実的で良い。ちょっと昔、日本でも少女買春組織の顧客リストが流出した事件を思い出した。見事に消されたよね。
その対権力ドラマが最後の最後まで続くので飽きずに読めた。

しかし何より良かったのがティリー。イギリスのFBI的組織で分析官をしてる天才なのだが、日常会話もままならない程無垢な箱入り娘。というか、自閉症なのではというレベル。主人公がこの娘を外の世界へ連れ出し、助手とする。犬と戯れたり、バギーに乗ったりするだけで大はしゃぎする様子は和まずにおれない。それでいて分析はキレッキレなので、このギャップにやられるのである。正直、この娘がこの本の魅力の大半。

また、カンブリアってイギリスの地名なのねとか、ストーンサークルが63個もあるとか、ストーンサークルを横切ってる電車があるとか、小ネタも良かった。イギリスの長閑な風景と相まって旅行している気分にもなれる。

訳者あとがきによると、シリーズ化してるらしいが、続きは訳されるんだろうか…。肝心のミステリー部分が微妙だったので、続刊も微妙な気がする。ただティリーが幸福であるのか、心配でたまらない。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #ミステリー

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