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『ホープは突然現れる』クレア・ノース(著)雨海弘美(訳)

私の名前はホープ・アーデン。人は私を記憶することができない。特性を生かし泥棒を生業とする私は、或るダイヤモンドを盗んだがために、完璧な人生の提供を謳うアプリ「パーフェクション」の開発元プロメテウス社に追われることに。逃走劇の最中、「記憶される人間」に戻る可能性を見出す私だが、すでに恐るべき計画の一部となっていることに気づく―。他者に記憶されない人生の意味とは。圧巻の世界幻想文学大賞受賞作。

誰にも記憶されない特異体質のホープと、孤独に戦う元工作員のバイロン、二人の人生が交差する物語。読後、静かなカタルシスとやるせなさで、ちょっと何も考えられなくなった。

ホープが、パーフェクション(フェイスブックの邪悪な上位互換的アプリ)関係者からダイヤを盗んだ事により、パーフェクションに敵対するバイロンと出会い、より悲惨な事態へと向かってゆくお話。

誰にも記憶されない、という特殊設定が本当にえげつない。
ある日、じわじわと他人から記憶されなくなり、16歳で親にすら「誰?」と言われ、恐怖される(むこうからすると家の中に知らない人がいる)。想像するだけで辛い。
家を飛び出し、生きていくため働こうにも、面接が終わった瞬間に忘れられるので就職なんかできず、盗みで生きていくしか無い。しかしこっちは、盗まれたことすら忘れられるという天職っぷり。そのギャップと、めげずに明るく生きてるホープが面白く、楽しく読める。”無料体験レッスンの女王”、”第一印象で私の人生はできてる”などのセリフが印象的。

世界を股にかける大泥棒になったホープ、それを追うインターポール、ホープと同じ体質の人間、脳を改造するパーフェクション、その警備主任、敵対するバイロン。ざまざまな要素が凝縮されたドラマの連続で、分厚い本なのに、まったくダレない。
ラストは、フィリパの件、マカレナの件がなければ…と思わずにおれない。

また、読了後連想したのは、ジョジョの奇妙な冒険第4部。ホープの体質はスタンド攻撃、もしくは、その能力ゆえ、独りで鉄塔に住む人生を選んだキャラ(鋼田一豊大)を思い出させる。
特殊設定だけでなく、境遇に負けず、信念に従い戦う姿勢がますますジョジョっぽく熱い。ジョジョノベライズは2冊読んでるが、正直、クレア・ノースの方が、よっぽど荒木飛呂彦っぽい。

クレア・ノースを読むのは、『ハリー・オーガスト、15回目の人生』に続き2冊め。特殊設定が続くが、どちらも傑作で圧倒的実力を感じる。
本書はスルーしてたので、読書メーターのコメントでおすすめしてもらって本当に良かった。
もう1冊でてるので、それも読まねばなるまい。しかし、あとがきを読むと、別名義が2つあり、それぞれファンタジーが出版されてるが、そちらは未訳。超残念。多分絶対面白いのに。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #ファンタジー


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