『真珠湾の冬』ジェイムズ・ケストレル(著) 山中朝晶(訳)
アメリカ人が”真珠湾”というだけで日本を非難してるように感じるので、本書ではどれほど悪し様に書かれているのか、おっかなびっくり読むも、まさかの親日でちょっと笑ってしまった。
お話は、逆さ吊りにされ腹を引き裂かれた死体から始まる骨太ミステリー。地道な捜査を続ける警察モノとして普通におもしろいのだが、途中で戦争が始まるという凄まじい構成。しかも主人公が香港出張中というタイミング。主人公は日本軍に連行されてしまい…。
刑事モノであり、戦争モノでもあり、根無し草の主人公がついに帰るべき場所を見つける生き様の物語。凄まじい読み応えだった。
ミステリーパートは、被害者宅の捜査で冷蔵庫のビールを飲んでたり、鍵のかかった車のトランクを銃で壊してたり、警官の横暴に時代を感じて楽しい。捜査自体はかなり真面目なんだけど。
また戦争をまたいだ捜査がすごい。帰国後、とっくに事件はお蔵入りしてるのだが、主人公は捜査をやめない。小さな手がかりから着実に犯人に迫ってゆく。追い詰めて決着をつけたときのカタルシスがすごかった。
戦争パートは、原爆だけでなく、東京大空襲に言及されてるのが珍しい。知らないアメリカ人多そうなので嬉しい。ついでに空襲は全国だったと言ってくれたら良かったのに。
また、日本時代のお話で、憲兵隊の少年の死がいちばん切ない。仕方なかったんだけど、やるせなさすぎる。少年の衝撃がいかほどかを考えるだけでつらい。二人の間でもしこりとして残るんだろうな。
また、ハワイに日本人がたくさん入植してて驚く。調べると多いときはハワイの三分の一が日系人だったそうな。ショーン・タンの本で知ったオーストラリアの入植もその後の日本人上陸禁止令も知らなかったし、日本人のことでも知らないことばっかりだな、と日々驚き。
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