記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『真珠湾の冬』ジェイムズ・ケストレル(著) 山中朝晶(訳)

1941年ハワイ。アメリカ陸軍上がりの刑事マグレディは、白人男性と日本人女性が惨殺された奇怪な事件の捜査を始める。ウェーク島での新たな事件を経て容疑者がマニラ・香港方面に向かったことを突き止めた彼はそれを追うが、折しも真珠湾を日本軍が攻撃。太平洋戦争が勃発する。陥落した香港で日本軍に捕らえられ、東京へと流れついたマグレディが出会ったのは……。戦乱と死が渦巻く激動の太平洋諸国で連続殺人犯を追う刑事の執念。その魂の彷徨を描く大作ミステリ。

アメリカ人が”真珠湾”というだけで日本を非難してるように感じるので、本書ではどれほど悪し様に書かれているのか、おっかなびっくり読むも、まさかの親日でちょっと笑ってしまった。

お話は、逆さ吊りにされ腹を引き裂かれた死体から始まる骨太ミステリー。地道な捜査を続ける警察モノとして普通におもしろいのだが、途中で戦争が始まるという凄まじい構成。しかも主人公が香港出張中というタイミング。主人公は日本軍に連行されてしまい…。

刑事モノであり、戦争モノでもあり、根無し草の主人公がついに帰るべき場所を見つける生き様の物語。凄まじい読み応えだった。

ミステリーパートは、被害者宅の捜査で冷蔵庫のビールを飲んでたり、鍵のかかった車のトランクを銃で壊してたり、警官の横暴に時代を感じて楽しい。捜査自体はかなり真面目なんだけど。
また戦争をまたいだ捜査がすごい。帰国後、とっくに事件はお蔵入りしてるのだが、主人公は捜査をやめない。小さな手がかりから着実に犯人に迫ってゆく。追い詰めて決着をつけたときのカタルシスがすごかった。

戦争パートは、原爆だけでなく、東京大空襲に言及されてるのが珍しい。知らないアメリカ人多そうなので嬉しい。ついでに空襲は全国だったと言ってくれたら良かったのに。
また、日本時代のお話で、憲兵隊の少年の死がいちばん切ない。仕方なかったんだけど、やるせなさすぎる。少年の衝撃がいかほどかを考えるだけでつらい。二人の間でもしこりとして残るんだろうな。

また、ハワイに日本人がたくさん入植してて驚く。調べると多いときはハワイの三分の一が日系人だったそうな。ショーン・タンの本で知ったオーストラリアの入植もその後の日本人上陸禁止令も知らなかったし、日本人のことでも知らないことばっかりだな、と日々驚き。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #ミステリ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?