『ホワイトコテージの殺人』マージェリー・アリンガム(著)猪俣美江子(訳)
マージェリー・アリンガムの初長編。100年前の本だが、ラストは普通に予想外で、十分今でも通用する。ラストの美しさは圧巻。アリンガムは法・正義の人でなく、善の人だなぁとしみじみ感じる。
キャンピオンシリーズではないが、若いキャンピオンだと、あのラストは難しいだろうね。
お話は、とある男が隣家で銃殺されるも、目撃者なし。関係者全員怪しいし、皆なにかを隠しているが…。という(今では)ベッタベタなやつ。
たまたま居合わせた青年の親が刑事なので、その縁で捜査を始めるも、一向に決定的証拠がつかめず…。
刑事はかなり有能なのに、息子がわりとボンクラで笑った。ポアロとヘイスティングスみたい。そんなペアで、被害者や容疑者たちの秘密を暴いてゆく。
よくある事件かと思いきや、国際的犯罪組織が出てきたり、関係者たちが急にリゾートに行ったりで、舞台がフランスにまで拡大してゆく。
ネタバレすると、「この中に犯人がいる!」的解決がない。広がりきった風呂敷が投げ捨てられて唖然ですよ。
後日譚として真実が語られ、刑事W・Tの苦悩が如何ほどかを思い知り、徳としか言えないラストに痺れた。
洗練されてるとは言えないが、20歳ちょっとでよくこれが書けたなと只々吃驚。
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