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『魔術師ペンリック』ロイス・マクマスター・ビジョルド(著)

ペンリック19歳、婚約式のために町へ行く途中、病で倒れている老女の最期を看取ったのが、すべての始まりだった。亡くなった神殿魔術師の老女に宿っていた魔が、彼に飛び移ってしまったのだ。おかげでペンリックは、年古りた魔を自分の内に棲まわせる羽目に。ペンリックは魔を制御すべく訓練をはじめるのだが…。ヒューゴー賞シリーズ部門受賞の“五神教シリーズ”最新作登場。

キャラが魅力的なファンタジーサスペンス。中篇3つが納められた、結構なボリュームの一冊。

色々事件が起こるが、陰鬱ではなく、楽しいキャラ達とあいまって、爽やかなドラマ。キャラたちの掛け合いをもっと読みたいので、続きも早く訳してもらいたいな。

この本は、五神教シリーズの最新刊だが、新シリーズなので、これから読んでもOK、という書評を見て手に取る。読んでなくても、世界についてくわしく説明してくれるので問題なし。しかし結局他の神の話が読みたくてたまらなくなる絶妙な世界感だった。

世界感は、5柱の神が実在する世界。神と対話できる聖者という職業も存在する。そして姫神、母神 、御子神、父神、庶子神の五神があり、動物が死ぬと、魂はいずれかの神のものに召され、それは教会の葬儀で証明される。

魔術も実在し、庶子神のもとを離れた霊的な何かが動物に乗り移り、死ぬとまた別の動物に乗り移る、というのを繰り返し、力と知識(人格)を蓄えたものが「魔」と呼ばれ畏れられる。それは庶子神の教会で管理され、魔が乗り移った人間を魔術師と呼ぶ。

この本では出てこない神々がきっと別の本で活躍するのだろう。ぜひ読みたい。シリーズ2作目の「影の棲む城」はヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞を受賞しており期待に胸が膨らむ。

ペンリックと魔

田舎貴族の末っ子ペンリックが事故で魔術師となるお話。道で倒れている老女を助けようとしたら、魔に乗り移られてしまい、誰もがこれどうするの?という感じが延々続き笑える。

魔とペンリックは割とあっさり同居してしまうのがちょっと物足りないかな。和解の前にケンカ位してほしかった。さらには、ペンリックを殺して別のもっとふさわしい人間に魔を移そう、といった話も出てこず、邪悪な人間にはちょっと爽やかすぎるかな(笑) しかし海千山千の姑10人と脳内で同居を想像するとペンリックの凄さがよくわかる。

ペンリックと巫師

葬儀を行うも神のもとに召された形跡がないという事件のお話で、人造の魔を作る巫師のお話。しかしその巫師は殺人事件の容疑者で、捜査官とペンリックが追跡する。

神にしくまれている、としか言えないドラマだった。読み手も同上人物達同様翻弄されっぱなしだった。死ぬと神様直々に迎えに来てくれる世界が羨ましい。あんなのなら死んでみたい。

ペンリックと狐

魔術師殺人事件のお話。誰が何のために魔術師を殺したのか、魔はどこへ行ったのか? またも捜査官とペンリック、さらには巫師達も犯人を追う。

ミステリー小説みたいに真相を引っ張らないので、ラストの意外性が薄いのがもったいない。そういう小説ではない、というのは、終盤のほのぼのした描写で如実にわかるのだけど、それならこんな凝ったミステリ仕立てにせんでも、とも思ってしまう。でもそれらの対比は面白かった。

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