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『象られた闇』ローラ・パーセル(著)国弘喜美代(訳)

切り絵作家のアグネスに不穏な影が迫る。彼女に肖像画を依頼した客が、次々と謎の死を遂げているのだ。真相解明のためアグネスが縋ったのは、11歳の霊媒師パールだった。死者の口から犯人を聞こうと開いた降霊会を機に二人の運命の歯車は狂い始める――アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞最終候補となった戦慄のヴィクトリア朝ミステリ!

雰囲気がべらぼうに良い! ”血管のなかの血栓さながら人の流れを妨げている”とか、”木々が溜めこんでいた金や銅を男たちの頭上に降りまき”等々、冒頭から延々と比喩が美しく、文章を読むだけで幸福だった。

ジャンル的には、ゴシックオカルトミステリ? 疑問系なのは、一切捜査しないから(笑) 
捜査はしないが、降霊会で被害者を降ろし、犯人を聞き出そうとはする。この降霊会描写が圧巻。めちゃくちゃ引き込まれた。主観的描写だからアンフェア気味ではあるけど、彼女らがどう感じたのかが知れて面白い。

お話は、切り絵作家の50代女性アグネスと、霊媒少女パールのパートが交互に語られ、街で見つかった死体が実はアグネスの客だった話を軸に、彼女らの生活が描かれる。
序盤は話が全然からまないが、アグネスがパールに依頼してから物語が加速してゆく。

アグネスの過去がじわじわ明かされるのも見処。行方不明の婚約者、死にかけた事故、死んだ妹等々、序盤からちらちら影だけ見せてたエピソードがラストで集約してゆく。

その他、終盤で明らかになる仕掛けが何個もあるのだが、正直それらは、まぁせやろな、という感じ。それよりも、パールのドラマの顛末が一番驚いた。ドン引き。

そしてラスト、犯人判明後の展開も予想外で良かった。読者を混沌に突き落としてくる。読後、今までのは一体どういうことなんだ? と悩む。はたして霊はいるのか、妄想なのか…。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #ミステリ

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