『象られた闇』ローラ・パーセル(著)国弘喜美代(訳)
雰囲気がべらぼうに良い! ”血管のなかの血栓さながら人の流れを妨げている”とか、”木々が溜めこんでいた金や銅を男たちの頭上に降りまき”等々、冒頭から延々と比喩が美しく、文章を読むだけで幸福だった。
ジャンル的には、ゴシックオカルトミステリ? 疑問系なのは、一切捜査しないから(笑)
捜査はしないが、降霊会で被害者を降ろし、犯人を聞き出そうとはする。この降霊会描写が圧巻。めちゃくちゃ引き込まれた。主観的描写だからアンフェア気味ではあるけど、彼女らがどう感じたのかが知れて面白い。
お話は、切り絵作家の50代女性アグネスと、霊媒少女パールのパートが交互に語られ、街で見つかった死体が実はアグネスの客だった話を軸に、彼女らの生活が描かれる。
序盤は話が全然からまないが、アグネスがパールに依頼してから物語が加速してゆく。
アグネスの過去がじわじわ明かされるのも見処。行方不明の婚約者、死にかけた事故、死んだ妹等々、序盤からちらちら影だけ見せてたエピソードがラストで集約してゆく。
その他、終盤で明らかになる仕掛けが何個もあるのだが、正直それらは、まぁせやろな、という感じ。それよりも、パールのドラマの顛末が一番驚いた。ドン引き。
そしてラスト、犯人判明後の展開も予想外で良かった。読者を混沌に突き落としてくる。読後、今までのは一体どういうことなんだ? と悩む。はたして霊はいるのか、妄想なのか…。
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