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『言葉人形』ジェフリー・フォード(著)谷垣暁美(訳)

かつて野良仕事に駆り出された子どもたちの為に用意された架空の友人、言葉人形。それはある恐ろしい出来事から廃れ、今ではこの博物館の片隅にその名残を留めている――表題作ほか、光と星の秘密を追う研究者の実験台となった無垢な娘の運命を綴る残酷な幻想譚「理性の夢」、世界から見捨てられた者たちが身を寄せる幻影の王国が、少女王妃の死から儚く崩壊してゆく「レパラータ宮殿にて」など、世界幻想文学大賞、シャーリイ・ジャクスン賞、ネビュラ賞、MWAなど、数々の賞の受賞歴を誇る、現代幻想小説の巨匠の真骨頂ともいうべき13篇を収録。

最後の三角形』が素晴らしかったので、こちらも読む。
こちらは幻想小説選りすぐりとの事だが、オチで現実に戻されたり、ホラーなのがちらほら混じってる。ファンタジーが読みたいんだよ! と、ちょっと残念。
ただ、後半はピュアな幻想小説が続く。『レパラータ宮殿にて』は寓話としても完成されてて大好き。
トータルだと、『最後の三角形』のほうが好きかな。

以下好きなのピックアップ。

〈熱帯〉の一夜

老人宅に無防備にしまわれていた黄金のチェスセットを盗んだ、とバーテンダーが告白するお話。

馬鹿な若者たちが、金持ちの年寄から盗む展開から、『はなればなれに』 みたいな話かと思いきや、猿の手系ホラーに変化して吃驚。
主人公が全然関係ない他人なのもちょっとおもしろい。主人公のノスタルジックな思い出とホラーのミスマッチ感がなんともいえず。

言葉人形

ダイナーへの道すがらみつけた謎の博物館で、一部の街だけで続いていた言葉人形という風習について知るお話。

なまはげ的儀式で、人為的にイマジナリーフレンドを植え付けるアイデアがすごい。
遠野物語っぽいお話だが、ほぼ現代なので、都市伝説っぽくもある。オチでビビらせてくるところもホラー。

夢見る風

年に一度吹く奇妙な現象を起こす風がやんでしまったお話。人々はその風を憎んでいたはずだが、吹かないとなると逆にストレスをうけ…。

”夏と秋が同じベッドにいて”という書き出しが本当に素敵。
夢見る風ロスの住民たちが立ち直ろうとする姿も美しかった。

巨人国

巨人に囚われた人間が脱走し、海辺で暮らすお話。そこには様々な漂流物がながれつき…。

『ファンタスティック・プラネット』が元ネタかな? 意味不明でシュールな展開が続く。時空を無視した因果のつながりが楽しい。 

レパラータ宮殿にて

どんな人間にも面白い役職をくれる王国のお話。
ある日王妃がヘビに噛まれて亡くなり、王は悲嘆で心を閉じてしまう。この王国で救われた人々が、今度は王様を救おうと流れの治療師に治療をまかせるが…。

海賊の末裔が好き放題やってるだけ、とも取れるのだが、ユーモアと愛にあふれた優しい世界が読んでいて心地よい。
最終的にすべてを失うものの、ラスト一文が美しく、最高の読後感。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #幻想小説

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