『最後の三角形』ジェフリー・フォード(著)谷垣暁美(訳)
どれも高レベル! 長編を蒸留したような短編ばかりで濃密。1日1編しか読めず、1冊読むのにめちゃくちゃ時間がかかったが、凄まじい満足感。
本書はジェフリー・フォードのベスト短編集の2冊。1冊目は本業の幻想小説で、それ以外、SFやホラー方面が集められたのが本書。しかしそもそもの土台が幻想的なので、SFやホラーを書いても幻想小説になってる。しかしそれが美しく素晴らしかった。
幻想小説苦手なのだが、稀にあるクリティカルヒット。1冊目も読まねば。
エクソスケルトン・タウン以外全部良かったが(あれはさすがに主人公が非道い)、以下、特に好きなのピックアップ。
アイスクリーム帝国
共感覚を持つ男のお話。共感覚を親に病気だと思われおり、刺激的な事は大概禁じられていたが、ある日脱走してコーヒー味のアイスクリームを食べると、いつもの共感覚とは違い、とある女性が目の前にあらわれて…。
超切ないボーイミーツガールもの。ラスト、2重3重に切なくてたまらない。彼を主人公にしたのが天才的。
最後の三角形
ヤク中のホームレスが老婆の家のガレージに忍び込み、淡々とした優しさにふれ更生してゆくお話、からの魔術のための殺人を老婆と一緒に防いでいく。
序盤のなんとなく更生してゆくところが一番おもしろい。
掲題作なのにオチは弱くて残念。他の話でもそうだが、ラストで驚く展開はあんまりない。序盤から流転しつづけるお話こそがこの人の真骨頂。
ナイト・ウィスキー
酔っ払いを木から収穫するお話。
その特訓シーンから始まるので、意味不明すぎて笑える。ちょっとずつ謎が明かされてゆくのが楽しいのだが、本番当日にまさかの事件がおこり、ホラー展開へ。予想外のギャップで、ラスト、本当に辛いんですけど…。
ばらばらになった運命機械
宇宙を股にかけ大冒険した男の回顧録的お話。
男の唯一の後悔と、死骸の中の歯車をめぐり、物語が展開される。
こーいうのでいいんだよ的大団円。地味に泣ける。
イーリン=オク年代記
子供が作った砂浜の城に住む妖精のお話。
子供が作った城じゃなきゃ駄目という時点でもう最高。
そして、妖精の寿命が一晩という衝撃。
ただ人間でいうと一晩なだけで、妖精的には普通の一生。体感時間が全然違う。城を襲うネズミやカニ、船に住む妖精との出会い、迫る満潮などの様子が、発見された妖精の日記から明らかになってゆく。
もう、本当に、めちゃくちゃ良い!! 只々良い! 本書で一番好き。
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