『言葉人形』ジェフリー・フォード(著)谷垣暁美(訳)
『最後の三角形』が素晴らしかったので、こちらも読む。
こちらは幻想小説選りすぐりとの事だが、オチで現実に戻されたり、ホラーなのがちらほら混じってる。ファンタジーが読みたいんだよ! と、ちょっと残念。
ただ、後半はピュアな幻想小説が続く。『レパラータ宮殿にて』は寓話としても完成されてて大好き。
トータルだと、『最後の三角形』のほうが好きかな。
以下好きなのピックアップ。
〈熱帯〉の一夜
老人宅に無防備にしまわれていた黄金のチェスセットを盗んだ、とバーテンダーが告白するお話。
馬鹿な若者たちが、金持ちの年寄から盗む展開から、『はなればなれに』 みたいな話かと思いきや、猿の手系ホラーに変化して吃驚。
主人公が全然関係ない他人なのもちょっとおもしろい。主人公のノスタルジックな思い出とホラーのミスマッチ感がなんともいえず。
言葉人形
ダイナーへの道すがらみつけた謎の博物館で、一部の街だけで続いていた言葉人形という風習について知るお話。
なまはげ的儀式で、人為的にイマジナリーフレンドを植え付けるアイデアがすごい。
遠野物語っぽいお話だが、ほぼ現代なので、都市伝説っぽくもある。オチでビビらせてくるところもホラー。
夢見る風
年に一度吹く奇妙な現象を起こす風がやんでしまったお話。人々はその風を憎んでいたはずだが、吹かないとなると逆にストレスをうけ…。
”夏と秋が同じベッドにいて”という書き出しが本当に素敵。
夢見る風ロスの住民たちが立ち直ろうとする姿も美しかった。
巨人国
巨人に囚われた人間が脱走し、海辺で暮らすお話。そこには様々な漂流物がながれつき…。
『ファンタスティック・プラネット』が元ネタかな? 意味不明でシュールな展開が続く。時空を無視した因果のつながりが楽しい。
レパラータ宮殿にて
どんな人間にも面白い役職をくれる王国のお話。
ある日王妃がヘビに噛まれて亡くなり、王は悲嘆で心を閉じてしまう。この王国で救われた人々が、今度は王様を救おうと流れの治療師に治療をまかせるが…。
海賊の末裔が好き放題やってるだけ、とも取れるのだが、ユーモアと愛にあふれた優しい世界が読んでいて心地よい。
最終的にすべてを失うものの、ラスト一文が美しく、最高の読後感。
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