『マイ・シスター、シリアルキラー』オインカン・ブレイスウェイト(著)粟飯原文子(訳)
真面目な看護師コレデはうんざりしていた。美貌の妹アヨオラが、今日もまたその彼氏を殺してしまったのだ。これで三人目。コレデは死体を処理するが、次第に警察の捜査が姉妹に迫り……。ナイジェリアの新星が描くブラックユーモアと切なさに満ちたサスペンス
コメディタッチだが、コメディではない。人間がいかにルッキズムに支配されてるかに切り込む良作。
誰もが振り返る美しい妹の人生はイージーモード、真逆の醜い姉はハードモード。さらに妹の世話まで焼かねばならない。妹に振り回され続ける姉の人生が語られるのだが、化粧しただけで笑われる主人公の生きづらさが読んでいて同情を禁じえない。
殺人をおかすきっかけとなった過去の事件もフラッシュバックのように描かれ、性的搾取やDVといった問題も明らかになてゆく。それらが、短い章立てと笑える文章で描かれ、めちゃくちゃ読みやすい。コレデの強さに目をみはるばかり。
主人公は死体処理にとどまらず、想い人まで妹にとられてストレスマックスなので、寝たきりの患者に洗いざらい愚痴るのだが、物語後半で奇跡の回復を遂げてしまう。
王様の耳はロバの耳的オチかと思いきや、斜め上(下か?)の続きがあり、ラストはそれしかないよね、という遣る瀬無さで一杯。
誰が悪いのかを考えるとモヤモヤしてしまう。父にもそうなった理由があるかもしれない。運が悪かった、としか言えないのがしんどい。
ちなみに、ナイジェリアでしか成り立たないというレビューをよく見かけるが、まったくの誤り。芯は至って普遍的。とはいえ、ナイジェリアの警察にはお世話になりたくないね…。
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