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『宿借りの星』酉島伝法(著)

その惑星では、かつて人間を滅ぼした異形の殺戮生物たちが、縄張りのような国を築いて暮らしていた。罪を犯して祖国を追われたマガンダラは、放浪の末に辿り着いた土地で、滅んだはずの“人間”たちによる壮大かつ恐ろしい企みを知る。それは惑星の運命を揺るがしかねないものだった。危機に立ち向かうため、マガンダラは異種族の道連れとともに、戻ったら即処刑と言い渡されている祖国への潜入を試みる――。『皆勤の徒』の著者、待望の初長編。
解説=円城塔

ついに読み終わってしまった。あまりに楽しいので毎日ちびちび読んでいたのに。読書自体が楽しいなんて初めてかも。

造語につぐ造語、そして異形の世界のお話なのに実にすんなり頭に入ってくる。漢字の意味と読みの語感でなんとなくイメージが湧きおこる言語センスに脱帽だった。

アリ型生物が「ほほ笑む」ではなく「顎笑む」とかユニークな表現の連続。日本語でこれほど遊べるのか!と感動した。そしてその量にも驚かされる。1ページに何個もオリジナリティあふれる造語が出てきて、つどこれは何かと解読するのが楽しすぎる。それんな中、「口内炎」とか普通に出てきて逆に笑ってしまった。

そんな独自の雰囲気で描かれる海底のような世界や文化が美しく、キャラ達の掛け合いも笑える。果たしてこの世界は何なのか、どうなってゆくのか、という本筋も十分面白い。

そして忘れてならないのが挿絵。なんと作者が書いている。結構上手。なので作者のイメージがそのまま伝わってくる。円城塔が解説で危惧した通り、これは創作ではなく作者が見た世界をそのまま書いているのかも、という気持ちになる。

第40回日本SF大賞は文句なしだよ。読み終わって、タイトルの宿借りがトリプルミーニングだったと気づく。美しい。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #SF #酉島伝法

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