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『天使と噓』マイケル・ロボサム(著) 越前敏弥(訳)

〈英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作〉臨床心理士のサイラスが施設で出会った少女イーヴィは嘘を見抜ける能力を持っていた。そして、彼らは警察の要請で女子スケートチャンピオン殺害事件の捜査に加わる。将来を期待されていた選手に、何が起こったのか――世界各国で激賞された傑作ミステリ

嘘を見抜けるキャラありきの特殊設定ミステリーかと思いきや、普通の刑事ドラマであった。普通におもしろい。正直、嘘が見抜けるとかより、二人の主人公の生い立ちの壮絶さのほうが魅力的。そんな二人が友愛を培ってゆく過程と、事件の捜査が2本の柱。

オリンピックも視野に入れる女子フィギュアスケート選手が帰宅途中に殺される事件が本筋で、警察でもない主人公が捜査を手伝う。現場の証拠と聞き取りで操作を進めてゆく。かなり地道。捜査が進んでいくと、皆が隠していることがどんどん明るみにでてきて面白い。そりゃあ誰も都合の悪いことは言わないよね。しかし主人公に違和感。臨床心理士の割に人を見る目がない。序盤隠し事をしまくってる登場人物たちに疑いを抱いてないところは都合良すぎるかな。

これと並行して、未成年用精神病院的施設の知り合いから、イーヴィをなんとかしてくれという相談をうけ接触してゆく。嘘を見抜けるキャラは普通に登場するものと思っていたので、その生い立ち、謎の多さにかなり興味が引き込まれる。同じように悲惨な生い立ちの主人公に心を許してゆく様子がほほえましい。そしてよかれと思ってやったことから事件に巻き込まれてゆく。この展開もなかなか予想外で面白かった。まさに子供の行動で、大人からすると証拠を台無しにしてるだけなのだが、力技でいなしており笑ってしまった。

トータルではかなり楽しめた秀作。嘘を見抜ける設定に期待してると拍子抜けなので要注意。

残念なのは、イーヴィの秘密はなにも明かされないまま次巻へつづくところ。正直、この本を読む一番のモチベーションだったので、明かされず心底残念。シリーズ物は完結してからまとめ読みしないと忘れるから嫌なんだよなぁ。

あと、コンドーム箱の指紋の謎が解明されてなくない? あの人の釈明嘘くさいし。モニョっとする。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #ミステリー

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