『八月の暑さのなかで――ホラー短編集』金原瑞人(訳)
英米のホラー小説に精通した訳者自らが編んだアンソロジー。エドガー・アラン・ポー、サキ、ロード・ダンセイニ、フレドリック・ブラウン、そしてロアルド・ダールなど、短編の名手たちによる怖くてクールな13編。
ホラー短編オムニバス。いろんな作家のちょっと不気味なお話が楽しめる。アウターゾーンとか、世にも奇妙な物語で育った世代にとっては、もはや物足りないレベルだが、未だ輝く作品も多い。レノックス・ロビンスンの『顔』が美しさ、不気味さで抜きん出ていた。
以下、好きなやつだけピックアップ感想。どうがんばってもネタバレなしで紹介できないので感想のみ。
『八月の暑さのなかで』W・F・ハーヴィー
これは不気味すぎる。こんな偶然の一致はありえないが、誰がなんのために仕組んだことなのか。犯人は神か悪魔しかいない上、目的は暇つぶしとしか思えない所がホラー。そして石工は100%被害者だよね。殺してないのに殺した扱いになるなんて…。
『開け放たれた窓』サキ
何度読んでも素晴らしい。この娘がどのように育ってゆくのか、楽しみでならない。
しかし、子供向け文庫だからか、やや蛇足気味。サキ短編集だと、もっと切れ味あるラストなので、そちらで読むのをオススメ。
『顔』レノックス・ロビンスン
湖の中に浮かぶ顔を見て育つ、という絵面が美しく怖い。そっくりの女と結婚するも…。という話だが、女が一切話さないのが不気味。果たして実在したのか…。雪女の昔話にちょっとだけ似てる。
『もどってきたソフィ・メイソン』E・M・デラフィールド
真に怖いのは人間だよね、という落語のような幽霊話。あのアメリカ人、このまま幸せなまま死にそうでもやっとする。
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