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『血を分けた子ども』オクテイヴィア・E.バトラー(著)藤井光(訳)

ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞の三冠に輝いた究極の「男性妊娠小説」である「血を分けた子ども」。
言語を失い、文明が荒廃し人々が憎しみ合う世界の愛を描き、ヒューゴー賞を受賞した「話す音」。
ある日突然神が現れ、人類を救うという務めを任された女性をめぐる、著者の集大成的短篇「マーサ記」。
7つの小説と2つのエッセイを収録する、著者唯一の作品集が待望の邦訳。

傑作ハードコアSF! サイエンス成分はほぼないが、これぞSF としか言えない。非日常で描かれる人間の醜さ、美しさがごっちゃになった、人間とはなんぞやという問に痺れる。

ベストSF 2022[海外篇]では5位だが、個人的には1位タイかな。この人、長編が本業らしいので、是非とも読まねばならない。が、短編でこの重さとなると、長編は結構な覚悟がいりそうなので、精神が好調なときに読もう。

以下好きなやつ。

血を分けた子ども

とある家族のもとに、異形だが人語を話す何者かがあらわれ卵を振る舞い…。

事前知識ゼロだったので、いきなり頭を殴られた気分。ポップな表紙に油断したぜ。
状況が全くわからないままお話が進んでいくので読みにくいが、すべてを理解する終盤はため息しかでない。
男性妊娠小説とあるが、そんな生易しいお話ではない。愛の物語にも見えるが、そう納得するしかないという状況で、やりきれない。宇宙に出た結果がこれとは。。。

夕方と、朝と、夜と

発症率100%、発狂し死に至る遺伝病のお話。その病にかかってる主人公とそのパートナーが、その病の患者たちが入院する病院を見学にゆき…。

遺伝病の特効薬が別の病気を引き起こしてるのが辛すぎる。
さらに病気によって人生が決められてしまう辛さが想像を絶する。
最後にちょっとした希望はあるものの、慰め程度でしかない。主人公はともかく、彼の心中を想像するだけでこっちが発狂しそう。

話す音

疫病で脳にダメージを負った人類は、考えること、話すこと、書くことなどができなくなり、世紀末を動物のように生きている。会話も筆談もできず孤独に苛まれた主人公は親戚を目指して旅に出る。

またも世界が辛すぎる。そして理性と本能のボーダーで生きてるほぼ動物にまで落ちぶれた人類が切なくて泣けてくる。なまじ知能とコンプレックスが残ってるのが憐れでたまらない。
人間の今の状況、本当に奇跡だよなとひしひしと思う。

恩赦

植物の塊のような集合体というエイリアンの通訳をしている主人公が、仕事を渋ってる新人6人を諭すお話。

ヒステリックな人類がひたすら見苦しいのだが、案外リアルなリアクションなのかもな、とひたすら残念な気持ちになる。なんのプラスにもならないファーストコンタクトが切ない。。

マーサ記

夢の中で神に出会い、このままだと人類が滅ぶので、なんでも実現させるから、なにか対策を考えてくれ、と言われ…。

こういうの、自分ならどうするか、という妄想が楽しくて仕方ない。
しかし、そもそも死滅してもよいのでは? という議論もしてほしかったな。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #SF

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