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『逃亡テレメトリー』マーサ・ウェルズ(著)中原尚哉(訳)

かつて大量殺人を犯したとされたが、その記憶を消されていた人型警備ユニットの“弊機”。紆余曲折のすえプリザベーション連合に落ち着いた弊機は、ステーション内で何者かの他殺体に遭遇する。連合の指導者メンサー博士をつけねらう悪徳企業グレイクリス社とかかわりがあるのだろうか? 弊機は警備局員インダーたちとともに、ミステリー・メディアを視聴して培った知識を活かして捜査をはじめるが……。ヒューゴー賞4冠&ネビュラ賞2冠&ローカス賞3冠&日本翻訳大賞受賞の大人気シリーズ、待望の第3弾! シリーズ短編2編を併録。

弊機シリーズ4冊目はミステリィ!(と掌編2つ) ステーション内の業務用通路で他殺体が発見される。元弊社が絡んでいるかもなので、警察機構だけでなく、弊機も捜査に加わることになるが、信用ゼロなのでハッキングは禁止される。アウェイ感の凄まじさが大昔の黒人刑事物を思い出させるレベル。

まぁ普通の人からしたら、ボットは人間の死体を使ったロボット、という認識なんだろう。なので冒涜的嫌悪感を感じてる。読者は弊機の一人称を読んでるので、感情も人格もある普通の人間だと知っている、このギャップが感じづらい。もうちょっと丁寧にボットの認識を描いて欲しいかな。

本編は、割りと地道に捜査するのだが、弊機のスペックが高いので常に警察の捜査の一歩先をゆく。それが、能力は認めざるを得ないが気に食わない、という微妙な空気を生むのが笑える。溝が深まってるのか縮んでいるのか微妙で楽しい。

しかし犯人側もハッキングを駆使しており、捜査が難航。犯人についても、そんなん予想できねーよという感じだったので、ミステリィとしてはやや微妙かな。でも全体を通じて、周りの弊機への理解が深まってゆくのは、見ていてニヤニヤできて良い。

掌編2つも地味だがツボを抑えており、文句なし。

ちなみに、今回一番笑ったセリフは「弊機は頭のパーツに人間の神経細胞を使ってるので知能が低いかもしれません。」

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #SF


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