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『オルタード・カーボン』リチャード・モーガン(著)田口俊樹(訳)

27世紀。死はもはや永遠ではない。人類は銀河系の惑星に散らばり、国連の専制支配下にある。人間の心はデジタル化され、小さなメモリー・スタックに記録されて頭部のつけねに埋め込まれている。肉体が衰え死を迎えるとスタックが残る。それを維持し、外側の肉体を買う金がある人間は永遠の生命を得られる。バックアップを取っていないメモリー・スタックを破壊された人間のみがR・D(リアル・デス=真の死)を迎える。犯罪者は精神のみを収容庫に拘禁され、財力がなければ肉体は売られる。
主人公、タケシ・コヴァッチは植民星ハーランズ・ワールドで生まれ育った元エンヴォイ・コ-ズ(特命外交部隊)隊員である。犯罪に加担したかどで百七十年の保管刑に服していたが突如釈放され、オールド・アース(地球)の見知らぬ男の体にダウンロードされた。数百年生き続けている大富豪ローレンス・バンクロフトの自殺の真相を究明すれば、十万国連ドルの謝礼と新しい肉体が手に入り恩赦を受けられるという。コヴァッチは六週間の期限つきで調査することになった。

ハードSFでハードボイルド探偵(?)モノ。大好物!
ニューロマンサーとブレードランナーを足して割ったような感じ。しかし読み終わると、カウボーイビバップの「浪花節だぜ、まったく」というセリフが脳内再生されたよ。SFだけど人情の物語。清濁併せ呑むエピローグが憎らしい。

舞台は、精神を完全にデジタル化し、任意のボディにインストールすることで不死が実現できてる未来。ただ、これには金がかかり、長生きするのは金持ちで、貧富の差は広がるばかりというディストピア。

そんな世界で、ある金持ちが自室で死亡し自殺と判断されるも、自分が自殺するはずが無い、とバックアップから復元された金持ち本人が納得せず、元特殊部隊で現在保管刑中の主人公をダウンロードして捜査させる、というお話。

前半は世界観をのみこみつつ襲撃を受けたり襲撃したりとかなり忙しい。エピソードも固有名詞も散弾のように飛んでくる。さらにはラブロマンスまで!
そして、後半でそれらが繋がってゆくが、結構な確率であれなんだっけ? になる。読み流してた背景が伏線だったりする。短期集中読書をお勧めする。

この世界観で特に面白いのが、ボディ(作中ではスリーブと呼ばれる)が高価な所。精神のバックアップはインプラントで簡単に行えるが、体の作製はまだコストがかかるので、保管刑になった貧乏人の体などが買われ、復活に使われる。(金持ちはクローンを作れる)
別人の体での復活となるので、本人、家族、恋人の戸惑いが凄まじく、このあたりの悩みがこの世界の定番らしい。主人公のスリーブも予想外のドラマがあって良かった。

どうでも良いが、武器のネーミングが、毒グモ弾とか手榴弾ライフルとかやたらダサいのはなんでだろ。これのせいで攻殻機動隊的カッコ良さはのがしてる。

ちなみに、下巻の登場人物一覧で黒幕のネタバレをくらうので、下巻を読む際は先に読まないように。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #SF


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