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『天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち』小川一水(著)

「わたくしたち市民は、次代の社会をになうべき同胞が、社会の一員として敬愛され、かつ、良い環境のなかで心身ともに健やかに成長することをねがうものです。麗しかれかし。潔かるべし」―純潔と遵法が唱和する。「人を守りなさい、人に従いなさい、人から生きる許しを得なさい。そして性愛の奉仕をもって人に喜ばれなさい」―かつて大師父は仰せられた。そして少年が目覚めたとき、すべては始まる。シリーズ第4巻。

エロい! 分量の半分近くが官能小説。規制の限界に挑戦したのかな?

時間は3巻の直後。春を売るアンドロイド「恋人たち」が最高のセックスを追求する。しかし、聖少女警察(ヴァージン・ポリス)や倫理兵器が恋人たちを追う! 何いってるのかまったく伝わらないけど字面がめちゃくちゃ良い所が最高(笑)

もう恋人たちが実用化され、5000人規模で小惑星型娼館を営んでいる時代のお話。恋人たちを作った人も明らかにされるが、枝葉末節。彼らの生き様とラゴスの生い立ちがメイン。

事故に巻き込まれた救世群の青年キリアンが恋人たちに助けられ、娼館で生活するようになり、当然いたして、なんだかんだいたして、恋人たちにおける究極のセックス「マージ」とは何かを追求し始める。記憶や体をいじり、初対面をやり直すのは当たり前、時間、場所、さまざまにシチュエーションを変えて出会い、セックスする。
人同士だけでなく、人外、虫でもセックス。体だけでなく、言葉、賭け、いろんなコミュニケーションでセックス。動けないガラスの像同士のセックスはちょっと笑ってしまった。

前巻の正統派冒険活劇から180℃の転換で戸惑うが、これはこれで非常に面白い。ただしエロだけでなく、救世群の刑務所のような生活が明らかになったり、1巻以来のシェパード号が出てきたり、恋人たちと救世群の関係が理解できたりと、シリーズの伏線もだいぶ明らかになる。レギュラーのダダーも当然出てくるし。

ラストのしんみりする余韻も素晴らしい。問題作、兼、名作。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #SF #小川一水

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