『呪いを解く者』フランシス・ハーディング(著)児玉敦子(訳)
15歳の少年少女が、呪いを悪用する社会と戦うダークファンタジー。
ティル・ナ・ノーグが実際に街の隣りにあり(原野と呼ばれる森と湿地)、呪いも実在し恐れられる社会で、呪いを解くことで金を稼ぐ少年少女が主人公。
ある日ゴールと名乗る男からの依頼を受けるも、実は政府筋の依頼で、敵対勢力から狙われるはめになり…。
憎しみに囚われた人に、小さな仲間(原野の生物。蜘蛛っぽい)が、呪いの卵をプレゼントしてくれる世界観がユニーク。
そしてまた呪いがエグい。いかに対象を苦しめるかを突き詰めており、相手を鳥にしたり、材木にして船にしたり、楽器にしたりしてる。一見ちょっと楽しそうだが、作中で語られる苦しみようは壮絶。
そしていやらしいのが、誰でも呪いをかけれるけど、誰がかけたかわからないところ。主人公ケレンは呪いをとけるけど、魔法のように解くのではなく、相手と理由がわかってないととけない。なので、解呪パートはミステリのように犯人探しを行う。
怪しいやつが呪人とは限らない。実際の犯罪同様、身内が犯人だったりしてつらい。
さらに、ハーディング作品は、下衆が本当に邪悪で、YAと思えぬレベル。本作も本当に酷い()。ますますダーク。でもここに嘘がなく、リアルなのがハーディング作品の魅力でもあるのよね。
追い打ちで、政府は呪人を収容所に閉じ込めるし、テロリストは呪いを武器にしようとしだす。そんな世界に主人公たちが巻き込まれ、対決せざるをえなくなってゆく。
中盤からの滝を落ちるような展開が圧巻で、最後まで一気読みしてしまった。(これはハーディング作品全般そうなるのだけど)
最後のファンタジーならではの駆け引きが最高だったし、主人公は大きく成長するしで、カタルシスひとしお。
あと、イギリス人のマグナ・カルタへの愛をひしひしと感じたわ(笑)
惜しむらくは、主人公二人がパートナーとして出来上がってるところからお話は始まるので、下巻から読んでるような気分になるところ。
後半、二人の絆の話になるが、読者はさして二人に愛着が持ててないので、ここで微妙に共感できない。
そもそも主人公ケレンは、正義の人で、頭がよいけど、自己中だし、善ではないしでイマイチ好きになれない。
もうひとりの主人公ネトルも自己主張が薄く何を考えてるのかわからないので、なぜ二人が一緒にいるのかわからず、余計のめりこめない。
しかしこれは成長譚の伏線でもあるので痛し痒し。
前半にもっと二人を愛せるツカミが欲しかったかな。
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