『時をとめた少女』ロバート・F・ヤング(著)
相変わらずのロマンス超特急! ロマンスのためにSFがあると言わんばかり。掲題作より「わが愛はひとつ」が甘々で大好き。
それだけに素のSF作品である「赤い小さな学校」「約束の惑星」が際立って格好良い。
全体的に外れなし。やはりヤングは良いなと再確認したよ。
わが愛はひとつ
新婚夫婦の男に懲役100年の刑に処されるお話。刑期を終えた男が廃墟とかした自分の村に帰るとそこには…。
構成がお見事。二人のなりそめの過去パートと、刑期を終えた現在パートが交互に語られ、男の絶望が浮き立つ。そしてSFだからこそ成り立つラブロマンスが素敵すぎる。ベッタベタだけど、こういうの大好き。
妖精の棲む樹
樹木伐採員のお話。とある惑星の巨木(数百m)を伐採することになり、木に登ってゆくと、木の精霊ドライアドと出会う。
一種の悲恋ものとして良い。それでいてSFとしても素晴らしく、星の衰勢と悲恋がリンクして痛ましい。この星の家々を見てみたいな。
時をとめた少女
ある男が公園である女性と出会い恋に落ちる。その翌日、同じ場所で別の女に声をかけられるが、すでに恋してるので袖にすると、この相性度であり得ないと絡まれ…。
ラブコメ枠。掲題作だが、ヤング作品史上一番、主人公がモテる理由が不明(笑) まぁ、ふたりとも誰でも良さそうだが(笑)
これまた背景、オチがSFで良い。しかし緩い機械だなと楽しく読める。
花崗岩の女神
誰が作ったのか、山や峰、湖などで作られた巨大な女性像に登頂するお話。
ヤングの癖が全面に出た作品。巨女好きらしい。よっぽどなんだな、と思わされるレベル。巨女好きは俺だけじゃないというオチも笑えて良かった。
真鍮の都
博物館にコピーを飾るため、千夜一夜物語のシェラザードをタイムマシンで誘拐するお話。しかし警備に見つかってしまい…。
ジンとの対決があったり、おとぎ話とSFが混ざった雰囲気が良い。
これまたオチが都合が良すぎだがOK(笑) でも主人公が現地で過ごすほうが影響ないんじゃないかな。
赤い小さな学校
親の元に出荷された少年が元いた所に戻ろうとするお話。
どんどん世界観があらわになってゆくと同時に、主人公の進退が窮まってゆくのが切ない。
約束の惑星
移民宇宙船が故障し、対象の星ではなく、ぎりぎり住めそうな冬の惑星に着陸するお話。移民船なので乗客は若い夫婦ばかりの中、若いパイロットが孤独に生きていく。
ヤングはこんなのも書くのかと吃驚の一遍。晩年の作品なんだろうか。自分がこの立場だとわりきれないだろうなぁと切なくなる。
後書
後書で、ヤング作品は英米では全然評価されてないという話があった。さもありなん。あっちは、男がショルダーバッグ使ってるだけで後ろ指さされる、メンツやルッキズム、レッテルの世界なのだから。こんなロマンスメインの作品を好きだというのは、男子小学生が少女漫画を好きだと言うくらい恥ずかしいことであろう。
女性からみても、男に都合が良すぎるし。とわかり味しか無かった。
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