『天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河』小川一水(著)
西暦2349年、小惑星パラス。地下の野菜農場を営む40代の農夫タック・ヴァンディは、調子の悪い環境制御装置、星間生鮮食品チェーンの進出、そして反抗期を迎えた一人娘ザリーカの扱いに思い悩む日々だった。そんな日常は、地球から来た学者アニーとの出会いで微妙に変化していくが―。その6000万年前、地球から遠く離れた惑星の海底に繁茂する原始サンゴ虫の中で、ふと何かの自我が覚醒した―急展開のシリーズ第5巻。
ノルルスカイン(ダダー)回。
ノルルスカインの誕生や、悪霊(ミスチフ)とのなれそめが明らかになる。さらに全知的生命体の敵(オムニフロラ)の存在も明らかになるし、そいつが宇宙の三分の一をすでに支配していたり、冥王班をばらまいた親玉だったり、ミスチフを取り込んでいたりと絶望しかない。
とっくに人類はオムニフロラに寄生されはじめている所が怖い。さらに、敵の強さと規模が圧倒的すぎて、今までのドラマが霞んでしまう。果たして人類は打ち勝てるのか。しかし勝ち筋がまったく想像つかない…。
また、ダダーの話と並行して農家の親子の話も語られる。小惑星でも小規模農家は大変だなと思わせつつも、ドロテア・ワットの話を蒸し返すという事は、今後遺跡とザリーカが再登場するのだろうか? 何のために? 楽しみでならない。
5巻目なのでシリーズ折り返しだが、体感的にそんな感じが全くしない。お話は広がる一方だよ。