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『沈黙の声』トム・リーミイ(著)井辻朱美(訳)

白い肌、白い髪、紅い瞳の魔法少年エンジェル。彼は巡回奇人一座と一緒にやってきて、平凡なホーリイの夏をめくるめく興奮と恐怖のうずに巻き込んだ。エンジェルを意のままにあやつるハーヴァーストック、小人のティム、半獣人ミノタウロス、幻想と現実のはざまに棲む者たち―アメリカの知られざる幻想作家トム・リーミイが、ブラッドベリにも似た透明で美しい世界を織りあげた、ファンタジーの傑作。

傑作短編集『サンディエゴ・ライトフット・スー』に比べ、長編は完成度低い。デビュー作なのでしかたない。それだけに夭折が本当にもったいない。もっとテクニックが磨かれた長編が読みたかったなぁ、と心底思う。
とはいえ、長編独自の良さがあまりないだけで、風景描写、キャラクター、設定などは短編同様抜きん出てるので、普通に楽しめる。
ファンタジーとして読むより、YAガールミーツボーイものとして読む方が楽しめるかな。ちょいエロだし。

20世紀前半の長閑なアメリカ田舎町へ、見世物一座がやってきたことに端を発するお話で、町の仲良三人組女子と、見世物小屋の人々との交流、事件が描かれる。ただし、見世物はフリークショウではなく本物の幻獣のようで…。

序盤、町の描写がまったり続くのだが、これが実に良い。麦畑が目に浮かぶ。また当時の電話は交換手経由なのだが、交換手と雑談し接続先の家人とも雑談し、やっと目当ての友人に繋がったりする描写にニヤニヤしてしまう。後半、交換手がプライバシーもらしまくりなのも笑った。当時普通だったんだろうな。こういう生きた描写を楽しむだけでも、本書を読む価値がある。

また、仲良三人組それぞれの女子ごとにドラマがあるのが面白い。それぞれ恋(だったり肉欲だったり)の物語だが、みごとにタイプが違い、女って怖いねとなる。中盤、殺人事件が起こってからの展開にしても、誰一人悲しまない様に若干引いたが。

だが、後半が実にもったいなく、登場人物が沢山いるのにキャラが全然絡まなかったり、事件が事件を呼ばなかったり、事の真相を団長が一人語りしちゃったり、ティムの逃走劇が完全に無駄だったりと、もったいないお化けが絶叫した。本当に惜しい。

本編と関係ないが、以下、翻訳で、ん?ってなった所。どっちやねん。
・スウェーター 
・腰にヒップのルビ

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #ファンタジー

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