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『接触』クレア・ノース(著)雨海弘美(訳)

私はケプラーと呼ばれる“ゴースト”――他人に触れると、その身体に乗り移ることができる。
ある時、身体を借りていた女性が、地下鉄の人混みで狙撃された。
私は咄嗟に近くの人へ飛び移り、やがて狙撃犯の身体を乗っ取った。
この男は何者で、なぜ私を狙う?
答えの鍵は、かつての宿主達にあるらしい。
私は、長い長い人生を思い返しながら手がかりを辿ってゆく――。
全世界、あらゆる時代を舞台にした、切なさ極まるSFサスペンス!

BLにしか見えないが、性なんて超越した人間の体を乗っ取る精神生命体のお話。ラスト、永遠にも思える時間とそれを埋め尽くす人生に目が眩んだ。

お話は、ある日殺し屋に宿主が殺され、理由がわからない主人公は、その殺し屋の体を乗っ取り調査に乗り出す。その組織の内部情報は書き換えられており…。

今回、他人の体を乗っ取れるゴーストと呼ばれる存在が主人公。気がついたら時間が飛んでる、というあるあるを、実は体が乗っ取られてたという恐怖に置き換えてくる。
主人公のゴースト、ケプラーはわりと長生きしてて性格も丸くなってるのだが、他のゴーストはアホも多く、マリリン・モンローになったりしてて笑えた。そりゃ人間を敵に回すよ、と納得。

この本はクレア・ノースの2作めだが、先に3冊目の『ホープは突然現れる』を読んだので感動は薄め。設定と内容がちょっとカブり気味。旅しながら物語を綴る形式もおんなじ。まぁ同じでも普通におもしろいので特に問題ないけど。
世界各地を普通にディスってるのが楽しい。旅中、次の街の話になり、「そこには何があるんだ?」「主に公共交通機関がある」で噴いた。

ただ、設定はかなり良いのだが、今作は敵(ボス)が残念。ただのサイコパスという感じ。因縁もよくわからない。
最後の闘いにしても、行き当たりばったりでもの足りず。ラストシーンが描きたかったのはわかるし、美しかったのだけど、粘着につきまとわれた不幸な事故として、ケプラーの長い人生の1ページにしかならなさそう。

ただ、肉体を次々乗り換えながら戦う疾走感と、ラストの寂寥感は素晴らしい。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #SF

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