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『窓辺の老人 キャンピオン氏の事件簿1』マージェリー・アリンガム(著)猪俣美江子(訳)

クリスティ、セイヤーズらと並び、四大女流ミステリ作家のひとりに数えられるアリンガム。その名探偵アルバート・キャンピオンの魅力を存分に味わえる日本オリジナル短編集。

キャラが皆生き生きしており(特に女性)、不思議なほど魅力的。短編でこれほど人柄や愛嬌が溢れ出るのか、とちょっと吃驚。

また、地の文や会話が皮肉でユーモラス。まさにイギリス文学って感じがして大好き。

ミステリーとしてはややアンフェアなのだけど、ハウダニットものじゃないので問題なし。むしろ主人公キャンピオンの博識っぷりが目立って良い。それにしても、この主人公、何者なのか全くわからないんですけど(笑)

本書は日本独自に編集した短編集らしいが、他の長編などにこの本のキャラが出てくるのだろうか。魅力あふれる女性陣は別の作品でも是非読んでみたいな。特にクロエ・プライエル嬢。この憎めない阿呆さが本当にキュート。とりあえずこの短編シリーズを楽しみに読もう。

ボーダーライン殺人事件

ありえない角度からの射撃についてのお話。これ現実にやられたら混乱必至だよ。頭の柔軟さが試される。

しかし、ロンドンの暑さが強調されてた割に、なんにも関係なくて笑ってしまった。気だるげな夏の午後、片手間に謎を解く姿も面白い。

窓辺の老人

ローズマリー老の再登場シーンを是非映像で見てみたい(笑) 事件の理由が最後まで語られないまま、不可思議な事態が続くので、じつに不思議な読み心地。

懐かしの我が家

歴史ある邸宅(ボロ)を大金で貸したおばちゃんが詐欺に巻き込まれるお話。

警察の忠告を甘く見てボコボコにされるキャンピオンに笑った。推理も微妙に外しておりなお笑える。お話全てをおばちゃんの愛嬌が持っていった。

怪盗<疑問符>

主人公の女友達が、とある事情から私立探偵を雇う事になり、婚約者を見張らせるが…。

もう冒頭の事の顛末から腹を抱えて笑う。もう事件とかどうでも良いよ、という気持ち。クロエ・プライエル嬢と旦那に幸あれ。

未亡人

お酒を一気に100年分熟成させる機械を発明したので酒を買ってくれ、という手紙が老舗酒店に来たが…。

詐欺のお話だが、その手練手管の見事さに驚く。これは現代人でも引っかかるよ。閉じ込められつつも警察を呼ぶことでなんとか勝利したが、暗号表をオーツ警視にわたすところを想像するとニヤニヤしてしまう。

行動の意味

真面目なエジプト考古学者が急に何故かダンスホールに通い出し、娘が心配して依頼してくるお話。

学者の謎も魅力的だったが、オチが予想外で良かった。探偵ものなのに、推理ではどうしようもない事態になるとは。キャンピオンだからこそ解決につながる所が、面白いというより、嬉しく感じてしまう。もうキャンピオンのファンになっちゃってるな(笑)

犬の日

キャンピオンが休暇を海辺のホテルで過ごすお話。

一番好き。10p程度だが、最初から最後まで完璧。主人公が大人げない所も素晴らしく、ラストをより盛り上げる。短編の魅力が全部詰まってるよ。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #ミステリー  

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