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『トムは真夜中の庭で』フィリパ・ピアス(著)高杉一郎(訳)

友だちもなく退屈しきっていたトムは、真夜中に古時計が13も時を打つのを聞き、昼間はなかったはずの庭園に誘いだされて、ヴィクトリア朝時代の不思議な少女と友だちになり…。75年刊の新版。

素晴らしいジュブナイルファンタジー。ラスト、めちゃくちゃジ~ンときた。テンプレ的冒険とか皆無で、ほのぼの遊んでいるだけだが、そういう、ささやかな幸福がいかに人生に必要かと気付かされる。

弟が麻疹にかかったため親戚の家に隔離されるトム。さらに、麻疹が感染ってるかもしれないからと、ずっと庭もないアパートから出られない最悪の夏休みに。ある晩、大時計と館の囁きにさそわれ外に出てみると、そこは広大な庭が広がっており、トムは探検を始める。そこは季節も時間も行くたびにバラバラで、ある日ついに人間を見つけるも、いかにも服装が古臭いうえ、トムが目の前にいても目もくれず…。という不思議なお話。

ハティという少女だけがトムを見れて喋れる。そこから一緒に木登りしたり、かくれんぼしたりと仲良くなってゆく。しかしハティは館で冷遇されていて…。と、どんどん引き込まれてゆく。
庭での邂逅はトムが実家に帰る日まで続くのだが、最後、トムは元の時間に帰らないことに決め…。

トムからしたらタイムトリップだが、ハティからしたら(無自覚の)イマジナリーフレンドだし、ハティの周りからしたら悪魔憑きだしで、いろんな捉え方が出来て面白い。さらにハティの時間だけが加速していたりと次から次に不思議がやってきて全然飽きない。

トムの不思議体験、不思議な大時計の力に思えるが、ハティの力なんだろうなぁ。不遇で孤独な子供時代を救うためトムを送り込んだのだろうか、とか考え出すとタイムパラドックスで頭がクラクラする。読後にSF成分がやってきて幸福。

文体や挿絵が古いので、ちょっととっつきにくいが、文句なしに傑作。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #ファンタジー

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