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5,6巻読了!『筺底のエルピス』シリーズ オキシタケヒコ(著)

殺戮因果連鎖憑依体―。それは古来より『鬼』や『悪魔』と呼ばれてきた。鬼狩りの組織“門部”は、古来より改造眼球『天眼』と、時を止める柩『停時フィールド』を武器として鬼を狩り続けてきた。百刈圭と、乾叶―心に傷を抱えながら戦う二人が遭遇したのは、歴史上たった六体しか現れていない“白鬼”だった。叶の親友に憑依したその鬼を巡り組織が揺れる中、もう一つの組織“ゲオルギウス会”が動き出す。“白鬼”とは何か?二つの組織の衝突の行方は?人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩が、いま語られる。

第1巻 絶滅前線

めちゃくちゃ面白い。そして濃密。出し惜しみなしの全力疾走という感じ。膨大な説明を見事にこなしつつ、既にクライマックスのヤバさが滲み出ている。絶対ラスボス黒鬼じゃん。CLAMP『X』みたいになっちゃうじゃん。どっちがなっても地獄じゃん。と戦々恐々。正直、続きを読むのが怖い。

お話は退魔異能バトルかつSF。人を常ならざる凶行に走らせる魔・悪霊・鬼といった存在と主人公達が戦ってゆく。普通この手の作品だと、魔は人々の負の思念とかなのだが、本作では異次元からの攻撃プログラム「殺戮因果連鎖憑依体」。なにより悪辣なのは、「殺戮因果連鎖憑依体」に取り憑かれた人を殺すと、殺した人に「殺戮因果連鎖憑依体」が移ってしまう所。この対策が常軌を逸してて笑ってしまったが、作者の頭の良さに唸る。

異能バトルも良い。異次元からの攻撃に対し、異星人(?)のテクノロジー「停時フィールド」で対抗する。これは時間を止める任意の空間を作り出す能力。人によりサイズや稼働時間、射程などが異なってくる。応用性なさすぎじゃない? と思っていたら、予想外の使い方ばかり出てきて吃驚。また作者の頭の良さに感嘆。
ちなみに主人公(ヒロイン?)の停時フィールドは、何でも切れる黒い刀で中2的魅力満載(笑)

ここまででも普通におもしろいのだが、さらに凄いのは、主人公の唯一の親友に「殺戮因果連鎖憑依体」が憑く所。しかも普通のやつではなく戦略兵器的代物。鬼は殺すしかないが、主人公にそんな事が出来るはずもなく、結果1巻目から組織内バトルが勃発するスピード展開にしびれる。
そして根本解決しないまま終わる。爆弾抱えたまま以下続刊。いつかだれかが黒鬼になるのだろうか。あぁ楽しみ!

野暮な疑問だが、人類が滅亡してる未来って、ゲート使用中で殺戮因果連鎖憑依体の処理が出来ないからじゃない?
あと未来から戻ってくる方法も若干腑に落ちない。ゲート片方だけ閉じれるの?

本編に関係ないが、シリーズ(既刊7巻)なのに第1巻がナンバリングされてないの、売れたら続刊だすよ、という事なのだろうか。怖い。
既に2巻は無事にでており、表紙絵が水着なのはご褒美なのだろう。もしくはテコ入れ。

ちなみに、オキシタケヒコは『ベストSF2020』でハマった人。続刊や他作も読まねば!

第2巻 夏の終わり

謎に包まれた第三の鬼狩り組織の襲来。情報統制を敷く《門部》式務。そして、それに抗おうとする離反者たち。様々な思惑が交錯する中、恐るべき柩使いと青鬼の出現によって、平和な夏が切り刻まれていく。

水着回と油断させといてこれだよ…。1巻は全力疾走じゃなくて助走だったのね。そして2巻も2速なんだね。理解したわ。

新要素は青鬼、THE EYE(第三の鬼狩り組織)、捨環戦。
赤鬼が単純暴力に対し、青鬼は権謀術数。人の負の感情を増幅させ同士討ちさせてゆく。川遊びに来ていた主人公と学校の先輩たちが泊まるロッジで、青鬼の反応が! この中に青鬼がいる! という展開で、人狼が始まるのかと思いきや、THE EYEとの戦闘に突入してゆく。

このTHE EYEがまたヤバい。倫理を捨ててる。人類を守るため人間を殺す。人の数が減れば鬼の発生が減り、対処可能となるから。一理あるけども! という事で主人公たちとは対立し、世界を敵に回しても君を守る!を地でゆく展開に。
しかし、相手は世界を牛耳ってる組織でめちゃくちゃ強い。ラスボスがやると思ってた停時フィールドを使う鬼、というのを、THE EYE の尖兵(雑魚)が普通にやってくる。モモがボロボロにされしまい、敵の超人テクノロジー奪って回復するのかと思いきやそれも出来ず追い込まれ、未来リセット権をかけた捨環戦が始まり、以下続刊。
TVアニメなら最終回手前みたいな状態なんですけど。
もう只々オキシタケヒコの才能に翻弄されっぱなしだよ。

しかし捨環戦がよくわからない。未来をリセットする意味とは? 被害度外視できるという事? 戻って何するの?強くてニューゲーム?
しかしどうせ予想した所で遥かに超えてくるので意味ないけど。

どうでもよいが、蝉丸も放射能ヤバいんでは。そして蝉丸に出番はあるのか(笑)

第3巻 狩人のサーカス 第4巻 廃棄未来

強大すぎる敵に対し、《門部》が「負けないため」の作戦――秘されたその真意とは何か。そして、進み始めた世界崩壊の真実とは。
人類の世界にこれまで六度、虐殺と大戦争をもたらしてきたという白い鬼を巡る、《門部》、《ゲオルギウス会》、そして《I》という三つのゲート組織の抗争が、ついに佳境の時を迎える。

前後編なのでひとまとめ。(第3章)
ついに捨環戦終了。凄まじいカタルシスと絶望感。とてもお風呂回から始まったとは思えないよ。
ぜひ少年ジャンプで漫画化して少年少女にトラウマを植え付けてほしい。ジョジョの系譜なのでイケる。

以下完全ネタバレ。

3巻半ばでマシラダが死んだ時心底驚いた。指針が消える恐怖が凄まじい。この大ピンチのなか、何をしたら良いのか全くわからない。
その後、おやっさん問題がえらく簡単に片付いたと思ったらエンブリオの大虐殺で読んでるこちらの心が折れそうになる。お前ほんとにラノベか? ガガガって心を削る音だっけ?
退魔モノなのに鬼すらでてこず、ここで3巻終了。2巻の頑張りを全て無に帰す鬼畜っぷり。リアルタイムで追ってた人の心境や如何に…。

3巻の表紙、横の人誰なん? と思いつつ読んでいたが、4巻表紙を見て全てを察する。つまり、ヒロインがここまで闇落ちする展開が待ってる。
捨環戦の特性上、戻るとダブるので、お話的に戻るのは一人で十分、ということかよオキシタケヒコよぉ…。

読むと、案の定死んでゆく。引き続きエンブリオが辛い、と思わせてからのヒルデの流れに感動したよ。しかし同時にもう一つの思惑が全くわからない。そしてついにはイヌイ一人になり、黒鬼まで発現してしまい、世界は核戦争へ突入する。
捨環戦で切り捨てられる世界線だと理解していても辛い。

捨環戦も最初は意味がわからなかったが、まさかただの実験、黒鬼のデータをとるためだとは。次元を超えた敵に対する《I》の絶対の意志を感じた。とはいえ、主人公たちは何も知らされずに地獄を見せられただけ。読者も呆然ですよ。
そして一人データを持ち帰ったイヌイだけが、引き続き地獄という…。(モモに意気地があればよかったのにな、と思わずにおれない)

この一連の流れは、ジョジョの奇妙な冒険第6部、ストーンオーシャンで履修済みなのに辛い。過去に戻り全部無かった事になって、それはそれで素晴らしいのだが、FFの言った通り、「さよならを言う私」が重要なんだよね。皆はいるが、ともに死線をくぐった皆じゃない。さらに自分までいるし。そりゃ慟哭するよ。

次巻以降もシリアスが続くのだろうか。
ぬるい日常に溶け込めない戦鬼イヌイが、藤原芳秀の『ジーザス』みたいになってくれんかな。

ちなみに、ラスト、ヒルデへの伝言からの流れは噴いた。本書で一番の癒やし。

第5巻 迷い子たちの一歩 第6巻 四百億の昼と夜

上下巻で第4章。章立てされてるが、5巻までが前半戦、6巻以降が後半戦かな。5巻はエピローグで、6巻はプロローグ。

5巻は、カナエドッペルゲンガー闇落ち問題に一応のケリがつく。オキシタケヒコには今までの前科があるので、いつ落とされるかとヒヤヒヤしながら読んだが、一本角の鬼という新要素があったぐらいで平穏に終わった。これから筺底のエルピスシリーズを読む人は、ここまで読んで完結を待ったほうが平穏に暮らせる。

6巻はいろんな人々の過去が明らかになり(師匠の人生、壮絶過ぎ)、大部分真実が明らかに。さぁこれから反撃だぜ! という所でゲート組織3つとも攻撃されほぼ壊滅、という所で以下続刊。

しかし人類、自分たちは捨環戦しといて、されるのは嫌がるの面白いな。
あと、120が白鬼を求める理由が気になる。そもそも殺戮因果連鎖憑依体がどっからくるのかを調査するのが最優先じゃない? それに繋がってる?

後半戦が楽しみだが、いつ完結するんでしょうか。


#読書感想 #読了 #ネタバレ #SF




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