『ベストSF2020』大森望(編)
一番好きなのは円城塔「歌束」。圧倒的貫禄。
本書での収穫はオキシタケヒコ。ドストライクだったので他作も読む。
馬鹿SF枠はハズレ気味かな。。
以下お気に入りの感想(掲載順)。
円城塔「歌束」
短歌と珈琲が入れ替わったかのような世界のお話。短歌に湯を注ぎ、ばらばらにほどけた文字からまた歌を作ってゆく。
途中から野生の短歌とか化石の短歌とかでてきて笑うしかない。楽しすぎる。なにをどう着想するのか、というのが一番不思議。
最近円城塔に耐性が出来て気がするので、単行本にチャレンジしてみようかな。
岸本佐知子「年金生活」
終末に向かいつつある世界、とっくに無くなったと思っていた政府から老夫婦のもとに年金が届くも…。
粘菌が望んだ何にでも変化してくれる。年金と粘菌がかかってる小咄。
最初は食べ物を願うが、しだいに不調な体、死んだ娘とどんどん願ってゆく。
最終的に全部粘菌に置き換わって滅ぶんだろうなぁと思うとたまらない。
オキシタケヒコ「平林君と魚の裔」
スペオペ枠。宇宙は銭ゲバだらけで、人類はアメリカを奪われ、多額の借金を背負わされた未来のお話。とある学者が雇われ銀河の端まで旅立つが…。
他種族たちが銭ゲバという世界観が斬新。それでいて、なぜそんな世界になってるかの説明がなされており、それがお見事。ぐうの音も出ない。自分も絶対商売してしくじるわ。たとえ駄目だとわかっていても。
また、造形だけでなく、環世界まで踏み込んだエイリアン像も最高。
上が前で、「待つ」生き方は想像もしたことなかった。五十嵐大介のウムヴェルトやディザインズも読んでるのに(笑) 応用しろ自分。
石川宗生「恥辱」
ノアの方舟モノ。船の建造のため、手伝った動物は船に乗せてやると行っておきながら、1種1つがいのみと言い出す鬼畜人類のお話。
短編の見本のような切れ味とテンポが小気味よい。
わりとシリアスに怨嗟を語っていたのに、急に天井の木目の話になって噴いた。
空木春宵「地獄を縫い取る」
感覚や感情までネットで伝達できる世界のお話。ペドフィリアを釣るためにそれらしいダミー少女をAIで作り上げてゆく。
伴名練の「chocolate blood,biscuit heart」、ジョン・ヴァーリイの「ブルー・シャンペン」を思い出す設定。他にもこういう世界の話は多そう。
本作はめちゃくちゃ耽美でホラー。短編なのに超こってりでお腹いっぱい。
陸秋槎「色のない緑」
AIが学者の仕事までをも奪っていく未来のお話。
ラスト一文が感動的に美しい。キッズ・リターン(北野映画)を思い出す。
しかしこちらはなんの救いもないんだよなぁ、と余計切なくなる。
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