『ゴースト・ドラム―北の魔法の物語』スーザン・プライス(著)、金原瑞人(訳)
心温まる王道ファンタジーが読みたいな、と思い手に取る。が、全然王道じゃなかった。ファンタジー世界でのホラーな復讐譚だった。
魔女に英才教育された奴隷の子供(チンギス)と、生まれた途端、窓もない塔上の小部屋に幽閉された王子様のお話。ラブロマンスかと思いきやまったく違って、チンギスは王子を魔法使いの弟子にするが、邪な魔法使いが邪魔をし…。と話が坂の下に転がってゆく。
この邪な魔法使いが本当に邪悪で、チンギスとはなんの面識もないし、利害関係もないのに、才能を羨んだだけで殺しにかかってきて吃驚だよ。完全にストーカー。
以下ネタバレ。
敵はチンギスの才能も把握してるし、自分も魔法使いだから魔法の弱点を知ってるしで、完璧な不意打ちでチンギスを襲い、そしてそのまま無惨に殺してしまう。この展開に唖然となるが、死後の世界で師匠と合流し、ゾンビとなって復讐する展開にまた唖然。音楽による魔法や足の生えた家などのファンタジー描写と、この児童書とも思えぬえぐい展開のギャップに度肝を抜かれた。
しかし、死後の世界があるなら、復讐しに戻らないでも、そのうち来るので、その時復讐すれば? と思ってしまった自分は気が長いのだろう。
また、本作、スラブ地方の昔話がベースらしいが、地獄的死後の世界や、生まれ変わりがあるのは興味深い。人間、考えることは皆同じよね。なぜ消えるのに耐えられないのだろう。不思議でしょうがない。
また、冒頭、ストーブの上で寝るという描写がでてきて、どういう事? と調べたら、ペチカというらしい。無駄がなくて美しい。いい夢が見れそう。めちゃくちゃ寝てみたい!
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