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パワードスーツ・ミリタリーSFの祖『宇宙の戦士』ロバート・A・ハインライン(著)矢野徹(訳)

〔ヒューゴー賞受賞〕宇宙艦〈ロジャー・ヤング〉号から発射された宇宙カプセルはいま、地球をうかがう敵惑星の地表めがけ暗黒の中を自由落下していく。勝利か降伏か、地球の運命は一に彼ら機動歩兵の活躍にかかっていた! 戦争肯定的な内容で、ベトナム戦下の米国に一大センセーションをまきおこした問題作。

実は読んでなかった名作シリーズ。スコルジーの『老人と宇宙』が結構好きなので、元ネタを読んでみる。

構成がまんま同じで、オマージュとはいえ、スコルジーパクりすぎだろと笑ってしまった。

お話は、兵役に志願して鍛えられてゆくのは同じだが、あちらほど軽くなく、英雄譚でもない。普通の士官のお話。彼が一人前になろうとする過程がえがかれる。なので、地球VSエイリアンの決着もつかないし、地球も救われないので、そういうのが読みたい人は、『老人と宇宙』を読もう。

この小説一番の特徴はパワードスーツで、この小説がすべての元ネタ。尊敬しかない。しかし、それらの派生で溢れている今の時代では驚きがなく残念な限り。当時の人の新鮮な驚きが羨ましくてしょうがない。

あと特筆すべきは、思想。歴史・道徳哲学授業の形で、作者の思想が語られる。これがまた尖っていて面白い。

印象深いのが、「権利と責任は釣り合っていなければならない」という下り。この世界は、人間に皆投票権があるわけではなく、兵役2年を無事終了したものしか、投票権を得られない。なぜか? 投票権は社会のありようを決める本当に大きな力だから、それに釣り合う責任は命しかない。社会のために命をかけて戦ったものだけが、権利を得られる。フリーライドは許さない思想はしびれた。今の世の、社会の利益より個の利益を追求している姿をみてると、こういう劇薬も必要かもな、と思わされる。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #SF

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