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#翻訳小説

『ロボット・イン・ザ・ハウス』デボラ・インストール(著) 松原葉子(訳)

AIが活躍する近未来のイギリス。妻に去られた三十代ダメ男のベンと、庭に現れたぽんこつ男の子ロボット・タングの旅と友情、成長を描いた『ロボット・イン・ザ・ガーデン』。多くの「タング・ロス」の声に応え、続編が登場。ベンと元妻エイミーに女の子ボニーが誕生して九カ月。二人は微妙な関係のまま、タングとボニーの両親として暮らしていた。お兄ちゃんになったタングは、妹のお世話をしようと大奮闘。喜んだりやきもちを焼いたりとてんやわんや。そんなある日、庭にまた一体のロボットが…。人間とロボットの

『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ(著)山田蘭(訳)

自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、自分が殺されると知っていたのか?作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作! まんまと騙されたよ。終わってからみると、たしかにそいつしか居ないのだけど、読んでる時は、怪しい演出にほいほい釣られる。お見事。 また

『われらはレギオン2 アザーズとの遭遇』デニス・E・テイラー(著)金子浩(訳)

増殖に増殖を重ねて百体以上になったボブは、人類が入植可能な惑星を求めて大宇宙を探索し、四つの植民可能な星系を見つけた。だがその途上で、ボブたちは原住生物が虐殺され、すべての鉱物資源が採掘し尽くされた星系をいくつも発見する。その犯人を〝アザーズ〟と名づけたボブたちは、その正体を探るが……!? 1巻ほどの波乱万丈さはないけど、物語は粛々と進んでゆく。とはいえ、エデンの発展や、地球からの人類脱出、ボブ(の一人)の恋、ボブ(の一人)の自殺、金属泥棒アザーズとの戦争突入、新たな知的生

『人間の手がまだ触れない』ロバート・シェクリイ(著)

このままでは、ふたりとも餓死してしまう!手違いのため食料を積み忘れた宇宙艇乗組員は、前方に現われた人跡未踏の惑星に着陸し、食料を調達しようとするが!?ブラックなユーモアあふれる表題作、時空にできた割れ目に挟まってしまった男の奇妙な冒険を描く「時間に挟まれた男」、殺人が特定のルール下で合法化された社会を舞台にしたサスペンス「七番目の犠牲」ほか、奇想天外でウィットに富んだ13篇を収録する傑作集。 傑作社会風刺SF短編集。70年前のSFだけど、ギャグ寄りで普通に面白い。さすがに出

『アウシュヴィッツのタトゥー係』ヘザー・モリス(著)金原瑞人(訳)笹山裕子(訳)

イギリスで130万部、全世界で300万部を突破したベストセラー、待望の翻訳。第二次世界大戦下のアウシュヴィッツで同胞に鑑識番号を刺青する役目を割り当てられたユダヤ人の男がその列に並んでいた女性と恋に落ちて「絶対に二人で生きてここを出る」と心を決め、あまりに非人間的な日常の中でささやかな人間らしさと尊厳を守り抜くために重ねた苦闘と誓いの物語。「タトゥー係」本人の証言による実話に基づく。 1日で一気読み。アウシュヴィッツでラブ・ストーリーとは斬新だな、と楽しく読んでいたら、まさ

『ケイトが恐れるすべて』ピーター・スワンソン(著)務台夏子(訳)

ロンドンに住むケイトは、又従兄のコービンと住まいを交換し、半年間ボストンで暮らすことにする。だが、到着した翌日に、アパートメントの隣室の女性オードリーの死体が発見される。オードリーの友人と名乗る男や、アパートメントの向かいの棟の住人の話では、彼女とコービンは恋人同士だが、まわりには秘密にしていたという。そしてコービンはケイトに、オードリーとの関係を否定する。嘘をついているのは誰なのか? 見知らぬ他人に囲まれた、ケイトの悪夢の四日間が始まる。ミステリ界を席巻した『そしてミランダ

『タイタン・プロジェクト』A・G・リドル(著)友廣純(訳)

作家のハーパーが乗ったロンドン行き三〇五便が墜落した。彼女と生き残った飛行機の乗客たちは助け合って救助を待つが、捜索隊はいっこうに現われない。それもそのはず、そこは人類が消えてしまった未来だったのだ! どうやらここは、ハーパーらが関わることになる全人類的大プロジェクトが実現したタイムラインらしい。なぜハーパーたちはここに連れてこられ、人類はどこに消えたのか?謎と興奮のタイムトラベルSF! タイタンという名前で宇宙SFかと思いきや、いきなり飛行機が墜落しサバイバルが始まる。し

『われらはレギオン1 AI探査機集合体』デニス・E・テイラー(著)金子浩 (訳)

ソフトウェア会社の社長兼プログラマーのボブ・ジョハンスンは、SF大会の会場で交通事故にあい死亡した。目覚めてみると、なんと117年後、キリスト教原理主義国家となったアメリカで、恒星間探査機の電子頭脳になっていた!はからずもほぼ無尽蔵の寿命と工業生産力を手に入れたボブは、人類の第2の居住地を探して近隣の星系を探索し、つぎつぎに新発見や新発明を成し遂げていく!傑作宇宙冒険SF、3部作開幕篇! めちゃくちゃ楽しい!徹夜で一気読みしてしまった。アンディー・ウィアー並にサクサク読める

『巨人たちの星』ジェイムズ・P・ホーガン(著)池央耿(訳)

冥王星の彼方から〈巨人たちの星〉のガニメアンの通信が再び届きはじめた。地球を知っているガニメアンとは接触していないにもかかわらず、相手は地球人の言葉のみならず、データ伝送コードを知りつくしている。ということは、この地球という惑星そのものが、どこかから監視されているに違いない……それも、もうかなり以前から……!! 5万年前月面で死んだ男たちの謎、月が地球の衛星になった謎、ミネルヴァを離れたガニメアンたちの謎など、からまったすべての謎の糸玉が、みごとに解きほぐされる。前2作で提示

『復讐のトレイル』C.J.ボックス(著)野口百合子 (訳)

その遺体には頭部がなく、狩られた獲物たちと同じような「処理」が施されていた。まるで狩猟が生き物を面白半分に殺す行為だと世界に訴えるように。ワイオミング州知事からの特命を受けた猟区管理官ジョー・ピケットは、ハンター連続殺人の背後に卑劣な人間たちの深い闇が潜んでいることをつきとめていく。 盛り沢山で一気読みしてしまった。いつも通りの構成だが最高に面白い。利権が絡まない話は珍しいね。でも相変わらず内部は腐っている。 懐かしい人々の再登場、糞野郎どもの退場にスカッとした。ただし本

『わが母なるロージー』ピエール・ルメートル(著)橘明美 (訳)

パリで爆破事件が発生した。直後、警察に出頭した青年は、爆弾はあと6つ仕掛けられていると告げ、金を要求する。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は、青年の真の狙いは他にあるとにらむが…。『その女アレックス』のカミーユ警部が一度だけの帰還を果たす。残酷にして意外、壮絶にして美しき終幕まで一気読み必至。 カミーユ警部三部作シリーズ、3.5作目の中編。時間軸は3作目の直前で、カミーユがパリでの爆破事件を追う。と思いきや、いきなり犯人が自首してくる超展開から心を鷲掴みにされる。 その後も当

『ロボット・イン・ザ・ガーデン』デボラ・インストール(著)松原葉子 (訳)

AI(人工知能)の開発が進み、家事や仕事に就くアンドロイドが日々モデルチェンジする近未来のイギリス南部の村。弁護士として活躍する妻エイミーとは対照的に、親から譲り受けた家で漫然と過ごす三四歳のベン。そんな夫に妻は苛立ち夫婦は崩壊寸前。ある朝、ベンは自宅の庭で壊れかけた旧型ロボットのタングを発見。他のアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、作り主を探そうと、アメリカへ。中年ダメ男とぽんこつ男の子ロボットの珍道中が始まった…。タングの愛らしさに世界中が虜になった、抱き

『フリーファイア』C.J.ボックス(著)野口百合子 (訳)

イエローストーン国立公園で四人の若者の射殺事件が起きた。しかも出頭してきた犯人は、“死のゾーン”と呼ばれる法律の抜け穴を巧妙に使って釈放されてしまう。調査を依頼された猟区管理官ピケットは、犯行動機に大きな企業陰謀がからんでいることに気づく。全米ベストセラーの超一級必読ミステリー。 ジョー・ピケットシリーズ6冊目。法の抜け穴をついた完全犯罪という強烈なツカミから始まり、渦巻く欲望、真相、裏切りと、ハラハラドキドキで2日で読んでしまった。 今回も、事件の裏には巨額の金があり、

『エレベーター』ジェイソン・レナルズ(著)青木千鶴 (訳)

15歳のウィルは射殺された兄のかたきを討つため、銃を持ってエレベーターに乗り込んだ。自宅のある7階から地上に到着するまでの短い時間に彼が出会う人々とは……ポエトリーとタイポグラフィを駆使する斬新な手法で文芸賞を席巻した注目作、ついに日本上陸! エドガー賞YA部門、ロサンゼルス・タイムズ文学賞ほか多数受賞! 詩で書かれた小説。 しかし、詩である必然が感じられないかな。体言止めかと思ったら、次の行で続くとか、半端なタイポグラフィとか、読みにくいだけに感じた。 どうせなら、絵を