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#小川一水

『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』小川一水(著)

人類が宇宙へ広がってから6000年。辺境の巨大ガス惑星では、都市型宇宙船に住む周回者(サークス)たちが、大気を泳ぐ昏魚(ベッシュ)を捕えて暮らしていた。男女の夫婦者が漁をすると定められた社会で振られてばかりだった漁師のテラは、謎の家出少女ダイオードと出逢い、異例の女性ペアで強力な礎柱船(ピラーボート)に乗り組む。体格も性格も正反対のふたりは、誰も予想しなかった漁獲をあげることに――。日本SF大賞『天冥の標』作者が贈る、新たな宇宙の物語! 百合漁業SF。主人公たちは可愛く、ラ

『天冥の標 IX ヒトであるヒトとないヒトと』小川一水(著)

カドム、イサリらは、ラゴスの記憶を取り戻すべく、セレスの地表に横たわるというシェパード号をめざしていた。それは、メニー・メニー・シープ世界成立の歴史をたどる旅でもあった。しかし、かつてのセレス・シティの廃墟に到達した彼らを、倫理兵器たる人型機械の群れが襲う。いっぽう、新民主政府大統領のエランカは、スキットルら“恋人たち”の協力も得て、“救世群”への反転攻勢に転ずるが― ラスト1歩手前、盛り上がってきた。情報は出揃ってきたものの、規模がどんどん大きくなり、解決への道筋が見えな

『天冥の標 Ⅷ ジャイアント・アーク PART1~2』小川一水(著)

西暦2803年、メニー・メニー・シープから光は失われ、《咀嚼者》の侵入により平和は潰えた。絶望のうちに傷ついたカドムは、イサリ、ラゴスらとともに遥かな地へと旅立つ。いっぽう新民主政府大統領となったエランカは、国家再興に向けた苛酷な道へと踏み出す パート1では、1巻のB面+アルファ。イサリやラゴス、フェオの視点から1巻の顛末が語られ、あのラストの続きも味わえる。 パート2では、咀嚼者達とメニーメニーシープ臨時政府の戦争、アクリラの孤軍奮闘、カドム達のセレス北極紀行のお話。み

『天冥の標VII 新世界ハーブC』小川一水(著)

“救世群”が太陽系全域へと撤いた冥王斑原種により、人類社会は死滅しようとしていた。シェパード号によって“救世群”のもとから逃れたアイネイア・セアキは、辿りついた恒星船ジニ号でミゲラ・マーガスと再会する。しかし混乱する状況のなかジニ号は小惑星セレスに墜落、かろうじて生き残ったアイネイアとミゲラは、他の生存者を求めてセレス・シティへと通信を送るのだったが―さらなる絶望を描くシリーズ第7巻。 お話は前巻の直後から始まり、引き続き地獄なのだが、地下に巨大シェルターが発見され、そこで

『天冥の標 Ⅵ 宿怨 PART1~3』小川一水(著)

西暦2499年、人工宇宙島群スカイシー3で遭難した《救世群》の少女イサリは、《非染者》の少年アイネイアに助けられた。二人は、氷雪のシリンダー世界を脱出するた めの冒険行に出発するが――。 一方、太陽系世界を支配するロイズ非分極保険社団傘下の、MHD社筆頭執行責任者ジェズベルは、近年、反体制活動を活発化させる《救世群》に対し、根本的な方針変更を決断しようとしていた。 大いなる転換点を迎える第6巻 イサリと石工のルーツのお話。 救世群が一線を超えてしまい、全面戦争に突入してし

『天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河』小川一水(著)

西暦2349年、小惑星パラス。地下の野菜農場を営む40代の農夫タック・ヴァンディは、調子の悪い環境制御装置、星間生鮮食品チェーンの進出、そして反抗期を迎えた一人娘ザリーカの扱いに思い悩む日々だった。そんな日常は、地球から来た学者アニーとの出会いで微妙に変化していくが―。その6000万年前、地球から遠く離れた惑星の海底に繁茂する原始サンゴ虫の中で、ふと何かの自我が覚醒した―急展開のシリーズ第5巻。 ノルルスカイン(ダダー)回。 ノルルスカインの誕生や、悪霊(ミスチフ)とのな

『天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち』小川一水(著)

「わたくしたち市民は、次代の社会をになうべき同胞が、社会の一員として敬愛され、かつ、良い環境のなかで心身ともに健やかに成長することをねがうものです。麗しかれかし。潔かるべし」―純潔と遵法が唱和する。「人を守りなさい、人に従いなさい、人から生きる許しを得なさい。そして性愛の奉仕をもって人に喜ばれなさい」―かつて大師父は仰せられた。そして少年が目覚めたとき、すべては始まる。シリーズ第4巻。 エロい! 分量の半分近くが官能小説。規制の限界に挑戦したのかな? 時間は3巻の直後。春

『天冥の標Ⅲ アウレーリア一統』小川一水(著)

アウレーリア艦長と《酸素いらず》の一統が奪われた忘却炉「ドロテア・ワット」を追う。西暦2310年、小惑星帯を中心に太陽系内に広がった人類のなかでも、ノイジーラント 大主教国は肉体改造により真空に適応した《酸素いらず》の国だった。海賊狩りの任 にあたる強襲砲艦エスレルの艦長サー・アダムス・アウレーリアは、小惑星エウレカ に暮らす救世群の人々と出会う。伝説の動力炉ドロテアに繋がる報告書を奪われたと いう彼らの依頼で、アダムスらは海賊の行方を追うことになるが……。シリーズ第3巻。

『天冥の標 2 救世群』小川一水(著)

西暦201X年、謎の疫病発生との報に、国立感染症研究所の児玉圭伍と矢来華奈子は、ミクロネシアの島国パラオへと向かう。そこで二人が目にしたのは、肌が赤く爛れ、目の周りに黒斑をもつリゾート客たちの無残な姿だった。圭伍らの懸命な治療にもかかわらず次々に息絶えていく罹患者たち。感染源も不明なまま、事態は世界的なパンデミックへと拡大、人類の運命を大きく変えていく―すべての発端を描くシリーズ第2巻。 現代地球でまさかの冥王斑アウトブレイク。SF成分少なめだが、アウトブレイク物として面白

『天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉』小川一水(著)

謎の疫病の感染源は、出自不明の怪物イサリだった。太古から伝わる抗ウイルス薬で感染を食い止めたカドムだったが、臨時総督府にイサリを奪われてしまう。一方、首都オリゲネスの議員エランカもまた、ユレイン三世の圧政に疑問を抱いていた。彼女は自由人の集団《恋人たち》と知りあうが、ユレイン三世はその大規模な弾圧を開始する。新天地を求めて航海に出た《海の一統》のアクリラは、驚愕すべき光景を目にするが…… 革命勃発の巻。 読了後、「イヤSFやんけ!」と言ってしまった。作者の思惑通りに。セナ

『天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉』小川一水(著)

西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし臨時総督のユレイン三世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に、植民地全域に配電制限などの弾圧を加えつつあった。そんな状況下、セナーセー市の医師カドムは、《海の一統》のアクリラから緊急の要請を受ける。街に謎の疫病が蔓延しているというのだが……小川一水が満を持して放つ全10巻の新シリーズ開幕篇。 SFとアナクロなエピソードが絡み合う群像劇。 一冊丸々プロローグ! 大量の濃い

『臨機巧緻のディープ・ブルー』小川一水(著)

カメラマン志望の石塚旅人は、相棒のAI・ポーシャとともに宇宙戦艦に乗り組んだ。太陽系を知り尽くした人類がはるかな星系へ送り出す『知に飢えた艦隊』、ダーウィン艦隊だ。目的地のカラスウリ星系には水に覆われた青い星が発見される。しかし星のそばには未知の宇宙艦隊が待っていた。緊迫の対立の中、タビトは愛機のカメラを抱えて、謎の種族が待つ海へ飛び込んだ。新感覚ファーストコンタクト物語。 地球外知的生命体とのファーストコンタクトものだが、状況が面白い。 地球の調査艦隊がワープで未知の星系