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2021年11月の記事一覧

『カミサマはそういない』深緑野分(著)

目を覚ましたら、なぜか無人の遊園地にいた。園内には僕をいじめた奴の死体が転がっている。ここは死後の世界なのだろうか? そこへナイフを持ったピエロが現れ……(「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」)。僕らはこの見張り塔から敵を撃つ。戦争が終わるまで。しかし、人員は減らされ、任務は過酷なものになっていく。そしてある日、味方の民間人への狙撃命令が下され……(「見張り塔」)。現代日本、近未来、異世界――様々な舞台で描かれる圧倒的絶望。この物語に、救いの「カミサマ」はいるのか。見たくない、しか

『帝国という名の記憶』アーカディ・マーティーン(著)内田昌之(訳)

大使として、銀河を支配する帝国を訪れたマヒート。そこは策謀が渦巻く混沌の極みにあった。ヒューゴー賞に輝いたSF宮廷陰謀劇 最近のヒューゴー賞はポリコレ臭いので警戒して読んだが、なかなかのエンタメ作品。宮廷劇がメインだが、記憶と人格を引き継ぐイマゴマシンという主人公の出身ステーションの独自技術が銀河帝国に波紋を投げかける。 序盤の展開や政治劇が士郎正宗のアップルシードそっくりなので、以後全部士郎正宗画で脳内再生されて幸福(デュナンとヒトミ)。 しかし、用語もわからないうち

『金春屋ゴメス』西條奈加(著)

近未来の日本に、鎖国状態の「江戸国」が出現。競争率三百倍の難関を潜り抜け、入国を許可された大学二年生の辰次郎。身請け先は、身の丈六尺六寸、目方四十六貫、極悪非道、無慈悲で鳴らした「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった! ゴメスに致死率100%の流行病「鬼赤痢」の正体を突き止めることを命じられた辰次郎は――。「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。 日本ファンタジーノベル大賞だから、というより、このインパクト強すぎる表紙に惹きつけられて手に取る。 冒頭、時代物と思い

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ(著)

人種も貧富の差もごちゃまぜの元底辺中学校に通い始めたぼく。人種差別丸出しの移民の子、アフリカからきたばかりの少女やジェンダーに悩むサッカー小僧……。まるで世界の縮図のようなこの学校では、いろいろあって当たり前、でも、みんなぼくの大切な友だちなんだ――。優等生のぼくとパンクな母ちゃんは、ともに考え、ともに悩み、毎日を乗り越えていく。最後はホロリと涙のこぼれる感動のリアルストーリー。 イギリスでの子育て随筆。本場の日本人差別はどんなものかな?と期待して読んだが、チンク呼び程度で