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2019年12月の記事一覧

『銀河核へ 下』ベッキー・チェンバーズ(著)細美遙子(訳)

銀河共同体政府からの大仕事を受注したトンネル建造船“ウェイフェアラー”。一年近くに及ぶ長い航海で訪れる様々な天体と、そこで出会う異星種族たち―訳あって火星を逃げ出してきたばかりの新人乗組員ローズマリーにとっては、すべてが驚きの連続だ。彼女たちはいくつもの危機を乗り越えて、未知の種族トレミが支配する銀河系中心部をめざす。そこで待ち受けていたものは? あっさり銀河核到達。そして意外な展開。終盤の展開は手に汗握った。物語はオールハッピーな大団円とは行かず、ちょっとしんみりして終了

『ロボット・イン・ザ・スクール』デボラ・インストール(著)松原葉子(訳)

プレスクールに通い始めたボニーを見て、タングが言い出した。「僕も学校に行きたい」。果たしてタングは人間の学校に入学できるのか…?ケンカ、別れ、新た出会い。毎日がてんやわんや、でもあったかくて愛おしい家族の日々に笑って泣ける、ハートフル小説。 ボニーが学校に行き始め、当然「何で僕には学校がないの?」とタングが言い出し、奮闘するベン達が相変わらずハートフル。 3巻目も前巻にひきつづき、学校やオフ会、旅行など、小粒エピソードの連続で、大きなストーリーがないのは残念だが、どのエピ

『嘘と正典』小川哲(著)

零落した稀代のマジシャンがタイムトラベルに挑む「魔術師」、名馬・スペシャルウィークの血統に我が身を重ねる「ひとすじの光」、無限の勝利を望む東フランクの王を永遠に呪縛する「時の扉」、音楽を通貨とする小さな島の伝説を探る「ムジカ・ムンダーナ」、ファッションとカルチャーが絶え果てた未来に残された「最後の不良」、CIA工作員が共産主義の消滅を企む「嘘と正典」の全6篇を収録。 初読み作家。魔術師がキンドルで無料公開されていて、それが面白くて手に取る。SFや非SFの短編集。ジャンルはヒ

『火狩りの王〈三〉 牙ノ火』日向理恵子(著)

ついに首都の結界が破られた。天然の火を携えて、首都へ侵入する〈蜘蛛〉。人々に恐怖が訪れる中、煌四は自ら開発した打ち上げ機が〈蜘蛛〉を殺戮するさまを目の当たりにする。 燃え上がる地上に降り立つ、白く光る少女〈揺るる火〉のまなざし。「…もう十分に死んでしまったのに。まだ殺し合いをする」。 水に棲み、なまぐさい息を吐く、人ではなくなったものたち。そして姫神の”依巫”として、神族に連れ去られた綺羅の運命はーー? 怒涛のシリーズ第三弾。 揺るる火があっさり登場して吃驚。機械ではなく神

『われらはレギオン3 太陽系最終大戦』デニス・E・テイラー(著)金子浩(訳)

アザーズ侵攻からパヴ人の星系を守るための戦いは敗北に終わった。しかもその戦闘で、敵に地球の位置を知られてしまう。つぎに狙われるのは地球だ!ボブたちは必死で対抗策を考えるが、対処しなければならない問題はほかにも数多くあった。ポセイドンの独裁者政権、ブラジルの複製人メデイロスの攻撃…そんななか、ついに強大なアザーズの艦隊が襲来する。地球防衛のために集結した500体のボブは…3部作、堂々完結! 無事完結。2巻は物足りなかったけど、3巻は予想外の展開ばかりで良かった。法廷ドラマまで

『生命式』村田沙耶香(著)

文学史上、最も危険な短編集。自身がセレクトした、脳そのものを揺さぶる12篇。 毎度のごとく”普通”を打ち砕く短編集。掲題作が珠玉。 今まで読んだ村田沙耶香の本では、普通な社会の中、(社会からみて)異常な主人公の生き様を語るものだったが、本作は逆で、(今の世からみて)異常な社会のお話。主人公に普通な人が多いので逆に新鮮な気持ち。 ジャンルとしては、ホラー、ヒューマンドラマ、コメディ、色々混ざっている。以下個別感想。 生命式新しい葬式のお話。人工が激減した社会、子供を作る

『ノパルガース』ジャック・ヴァンス(著)伊藤典夫(訳)

まさかこんなことが!国防総省所属の科学者ポール・バークは愕然とした。謎の異星人に突然拉致され、焦土と化したその母星へと連行されたのだ。自らをトープチュと称する彼らは、通常は見ることも触ることもできない怖るべき寄生生命体ノパルを殱滅すべく戦っているのだという。そして、ノパルの発生源ノパルガースを浄化する協力をバークに求めたのだが、なんと、そのノパルガースとは!?鬼才ヴァンスが放つ戦慄の異世界。 なかなかの佳作。 人類みな脳が不可視のバケモノ(超でかい)に寄生されているという

『天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち』小川一水(著)

「わたくしたち市民は、次代の社会をになうべき同胞が、社会の一員として敬愛され、かつ、良い環境のなかで心身ともに健やかに成長することをねがうものです。麗しかれかし。潔かるべし」―純潔と遵法が唱和する。「人を守りなさい、人に従いなさい、人から生きる許しを得なさい。そして性愛の奉仕をもって人に喜ばれなさい」―かつて大師父は仰せられた。そして少年が目覚めたとき、すべては始まる。シリーズ第4巻。 エロい! 分量の半分近くが官能小説。規制の限界に挑戦したのかな? 時間は3巻の直後。春