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「あれ?今日、何日だっけ?」

「あれ、すいません。今日何日でしたっけ」
私は会社の上司に聞いた。
「今日?確か11月4日とかじゃなかったっけ?」
「ああ、そうでした、そうでした。ありがとうございます」

その上司に対して礼を述べると、私は会議室を後にした。
自分の持ち場にもどって席に着くとあることを考えていた。

『――今日は絶対11月じゃない!』

いや、このまえ何かに12月って打ち込んだし……
気温とか、季節感からしても11月とは考えづらいだろう……

――そうだ。携帯。いや、携帯でもパソコンでも何でもいい。調べればはっきりするじゃあないか。わざわざ人に聞く必要もあるまい。

そう思ってスマホの画面を見た。
――あれ?
日付が書いていない……!
すぐにネットで検索した。「日付 表示されない」

検索するとどうやら、海外の大規模なテロによる電波障害だとかで日付が狂ってしまい直すのには数時間かかるらしい。詳しく読もうとしたが時間の詳細など数学にはめっぽう弱いためそこで見るのをやめた。
おい、何だよテロって。もう……めんどくさいことするなぁ……

私の予想では、今日の日付は12月20日。なぜかは分からないがはっきりと断言できる自信がある。けれども、仮に今日が12月20日だとしても上司と一カ月以上ずれていることになる。
あり得ない。

そこで私は隣の同僚に聞いてみた。
「すいません。今日って何日でしたっけ?」
突然尋ねられたその同僚は首をかしげたが、すぐに答えた。
「今日は12月――」

お?

「15日じゃありませんでしたっけ?」

嗚呼。
「そうでしたね。ありがとうございます」
納得できない。今日は20日だろ。
私は居ても立っても居られなくなり、この会社で最も仲のいい同僚に会いに行った。

「おお、どうした?なんかやらかしたか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……今日って何日だったっけ?」
「決まってるだろ。今日は12月――」

さすがは心の友よ。

「24日だろ。クリスマスイブじゃないか」

なんということだ。

「帰り道に、ケーキ取りに行かなきゃな―」

その後、同僚が子供の話に入ろうとすると、私は少し用を思い出したことを伝え、また持ち場に戻った。

おかしい。この会社だけでも日にちが人それぞれで違いすぎる。人間の感覚ってこんなにもいい加減なものなのか?

それから数日間後。正確に記述すると太陽が沈み、昇るという事象が数回起こった後のこと。

――まだ日付は直っていなかった。なんでもテロは組織的な犯行で、あれで終わりじゃあなかったらしい。
何てことしてくれるんだよ……もう……

おかしくなったのは日付だけではない。時間もおかしくなっていた。人それぞれで携帯の示す時間が異なるのだ。

人は自らの信じる日時を主張しあった。
「今日は〇月〇日だ!」
「いいや、それは違います!」
終わりなき論争。根拠がない。

世間や会社が訳も分からずあたふたする様を見て私はふと、「これが相対性理論ってやつか……」と勝手に感慨にふけっていたもののそんな暇は私にもなく。

さらに数週間たつとようやく、明日の朝ごろには本当の日付、時間が提示されるという。なんでもテロがあったときから天才チームが既に予見して動いていたとか……だったら早く直せよと思ったがそれはさておき……
というか本当の時間ってなんだ?
まぁ、やっと時間がわかるならそれでいい。

地球の自転とか細かいことはよくわからん。偏に大半の人間は時間を信じることしかできないのだろう。

そうして私は考えるのをやめて気持ちよく眠った。

翌朝。
日付は1月1日。
気付けば年が明けていた。



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