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【LGBT】LGBTとキャリアの形成(3)

大企業か中小企業かによっても異なると思うが、支援や特別な配慮についてはとても言いやすくなったのではないか。

ただ、カムアウトについては、最近は特に「すればいいじゃん」と簡単に考えてしまう傾向もあって、少し危険だと思っている。

例えば、直接の知り合いでこんなパターンがあったという例を、少し紹介したい。

その1:20代ゲイ男性(現在は水商売)

アジア系のハーフで、幼少期に来日して以来、日本で育つ。
見た目は日本人そのもので、日本語を話すけど、母国語も問題なく使えるらしい。
コミュ力が高くて、流行りにも詳しく、ダンスをやっている。
本業ではないがダンス・インストラクターや旅行の通訳のようなこともやったことがあるという。
日本でアパレル企業に就職したが、ゲイであるという噂を流され、靴や洋服が隠されたり捨てられるなど、いじめを受ける
ゲイというのが本当だったことと、自分を抑えてきたことなど、いろいろ重なって、約5年働いた会社を退職し、現在はいわゆるオネエ系としてミックスバーで働いている。

その2:30代トランス男性(現在は自営業)

外資系企業に勤め、仕事ができる憧れの若手上司という感じで、社内でも人気があった。
周りには公表せず、FTMやレズビアンが登録できるマッチングアプリに登録していた。
あるとき会社のセミナーがあり、会場内の別部署の参加者の中に同じアプリを使っている人がいて、「近くにいる人を探す」機能が反応し、この人だとわかる人物がヒットした
そこから、あの人女なの!?ショック、というふうな人が出てきて、特にカッコいい先輩だと思っていた、という同じチームの後輩の半数以上が、他のチームに移りたいと申し出た
この件は社内で問題になり、その結果、マッチングアプリや位置情報の管理等について、研修が行われた。

◆カムアウト(カミングアウト)・・・セクシャル・マイノリティであることを他者に打ち明けること。
◆クローゼット・・・セクシャル・マイノリティであることを隠す、または隠している人。オープンの対義語で使うクローズではなく、部屋のクローゼットに閉じこもる、という意味がある。
◆アウティング・・・本人のセンシティブなことを、第三者が合意なく、公開していない対象に公表すること。ハラスメントの一つとされる。
◆FTM・・・Female To Maleの略。女性から男性のトランスジェンダー。

もう一つ、親に言えない人に対して「無理に言わなくてもいいんじゃない?」という人もいて、それも非常に危険だと思っている。

ケース1:
田舎というほどではないが、地元で今の姿をすると目立つといって帰りづらい人がいる。郊外や田舎、小さい町だと、ちょっとした話題がすぐ広まったりして、場合によっては憶測や様々な尾ヒレがついたり、格好のネタになる。

ケース2:
少し似ているが、連休や墓参りで帰省するときだけ、元の性別に戻す、または、セクシャリティを隠す人もいる。血縁者だと余計に「相手は?」「結婚は?」となりやすく、たとえ一部には話していたとしても、親戚全員にオープンではないという理由から、話を合わせている。

ケース3:
FTMに限っては、声変わりをする。一緒に住んでいてもいなくても、家族に内緒で、というのは、成人して収入があったとしても事実上不可能。意識的に高い声や低い声を出すのではないので、電話をするのにも「風邪ひいてて」などといってごまかしている

このような「想定外」がたくさん潜んでいて、意外とトラップだらけである。
これらはまだ氷山の一角だ。

しばらくは黙っていてもいいけど、結婚報告や戸籍や書類の関係で、報告せざるを得ない場面がどこかでやってくることがあって、必ずしも「理解してほしい」「受け入れてほしい」という理由から、親に言いたいけど言えない、言いづらいと悩んでいるわけではない。

最後に

仕事で大阪から東京に移ったトランス男性の友人がいる。
数か月経ったころ慣れない環境や忙しさで「10円ハゲ」ができてしまった。

そのとき、東京の人はハゲに触れてくれないのか、と言われた。
短髪だから丸見えだし、むしろツッコんでほしかったようだ。

関西人だなあ、と思った。

確かに「触れてはいけないもの」になると、笑えない。

対等な友人関係ばかりではない中で、「私は気にしないから大丈夫だよ」なんて通用しない。
実際の問題は人それぞれで、外から本人を励ましたり、本人の在り方次第ではない部分もまだまだあって、つくづく難しいと思う。

今後「嬉しかった体験談」も集めていければ幸いである。

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