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分かってくれるんだね

怒鳴る殴るが当たり前の家庭で育った。恐ろしい父親の機嫌を損ねないように気を付けて生きてきた。父のような人とは付き合わないように注意してきた。それでも、どんな人と付き合っても、ふとした瞬間に恐怖心に囚われて混乱する人間になった。常に人の顔色を伺う癖が体に染み付いた。

ふとした瞬間は相手の機嫌に関係なくやってくる。昨日は君と買い物に行って、君が私に買ってくれる誕生日プレゼントを選んでいる時だった。なんとなくのイメージしか持っていなかった私は欲しいものが定まらずに悩んでしまって、待たせてしまうことでプレッシャーを感じ、君は大らかに待っていてくれたのに1人でパニックになった。こうなったら頭が働かず、「どうしようどうしよう」で心がいっぱい。何かを決めるなんてとてもできない。自分が納得するか、ではなく、いかに君を待たせないかを考えてしまう。そんな私のおどおどした態度は、当然君を不機嫌にした。
「男性恐怖症が根本にあってパニックになってしまった」という私の説明を、「あなたが怖いせいだ」と解釈した君はさらにいじけた。でも、「君だからじゃなくて、君じゃなくても、誰に対してもそうなってしまう」と説明したら分かってくれた。

「分かってもらえた」

私にとって初めてのことだった。今までにも自分の問題を付き合っている人に説明したことはあったけど、相手の反応は「よく分からない」という風な顔や、「なにそれ怖い」という感想に留まった。生きてきた過程が違うのだから、理解されなくても仕方ない。
それが、君には分かってもらえた。「今度またちゃんと欲しいやつ買いに行こう」とまで言ってくれた。私だけの直すべき欠点とせず、「仕方ないよ。次は座って待ってるね」と解決策まで提案してくれた。パニックもすっかり治って、安心を得た。

もしかして君は、運命の人なのだろうか。

そうでなくても良いんだけど、そうであっても良いかもしれない。君には包容力がある。私の過去を忘れずにいて、暗い部分も分かってくれる。もしかしたら、君みたいな人はそういないかもしれない。

君が今後も私といたいかなんて分からない。あんな風に君に失礼なことをしてしまって、余計に私と離れたくなったかもしれない。私みたいな歪んだ人じゃなくて、朗らかな人といるべきかもしれない。
私だって、今後も君といたいかなんて分からない。また君の失態が重なれば、一緒になんていたくないと思うかもしれない。

でも。

少なくとも今は、あなたが大好きです。

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