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第九章 再修羅場⑬

一哉が他の席を回りに行っている間に、アイフォンをチェックする。

サイトがどうしても見たいのだ。

一哉のサイトの前に、どうしてもマチルダのサイトが見たかった。


「今日の大事件」

「何があったの?」

「修羅場。女の闘い。やっぱ怖いわ」

「永遠のライバルじゃね?」

「だから何があったの?」

「ブリリアントの日向梨紗が乗り込んできたんだよ!」

「すご」

「マジ?」

「思いきり引っぱたいたんだって」

「どっちが」

「どっちもどっち」

「梨紗の顔に一生消えない傷を負わせたらしい」

「何それ。ありえない」


などなど、書かれてあった。

そして、一哉のサイトを見てみる。


「こちらもまた修羅場発生!すごいです!」

「安奈対梨紗」

「それって、カタ付いてたんじゃないの?」

「安奈が梨紗に土下座したよ!多分一哉に言われて。泣きながら土下座してた」

「あの安奈が?」

「何で土下座?」

「すごくね?」

「何があったの?!何がどうなってんの?!」

「今はどうなってんの?」

「安奈帰宅」

「梨紗いるなら行こうかな?顔見たい」


などなど。

随分と細かくご親切に。

きっとというより、絶対にこのフロアのどれかの女が書き込んでいるに違いないんだけれども。

まさか、喧嘩を売るわけにはいかなかった。

そして、あたしは……。

自分のサイトを見てみたんだ。


日向梨紗のサイトを。

「梨紗辞めたの?最近見かけない」

「辞めたよ」

「マジで?」

「スゲーショック」

「梨紗が辞めて、ブリリアントは平和です」

「何で辞めたの?」

「安奈に顔傷つけられたらしい」

「嘘?怖い、安奈……」

「あの二人、凄かったもんね」

「安奈が梨紗を潰したの?」

「ホストとラブラブ」


などと書かれていた。

あたしは、ただ無言で焼酎の水割りを一気に飲み干した。


「梨紗」

一哉が、あたしの隣に戻ってきた。

「ごめんね、一人にして」

「うん」

「平気?」

「大丈夫」

「何かあった?」

「安奈が気になって……」

「もう安奈の話はやめよう。終わったんだよ。梨紗?」

「分かった……ごめんね」

「ほら、楽しく飲もうよ」

「うん……」

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