第十章 平和?!⑥
食べ終わったコンビニ弁当をキッチンのゴミ箱へと捨てに行き、一哉はシンクを見て言った。
「今日……誰か来たの?」
コーヒーカップが二つ、シンクに置きっぱなしになっているのを発見されてしまった。
どうしよう。
洗い忘れていた。
「あ、あたしが二杯飲んだ」
「梨紗って、嘘つくの下手じゃない?これ、来客用のカップじゃん。いつも梨紗が飲むヤツ、このマグカップじゃん」
げ。
うーん。
誰が来たと言おうか。
「麗子が……ブリリアントの麗子が来た」
「麗子?」
「うん、ごめん。一哉の家ばらしちゃったけど、麗子はホスト行かない子だから安心して」
「ふうん」
怪しげな視線を、あたしに投げやる一哉。
「で、麗子は何しに来たの?」
そう言って、あたしの首に腕をからませプロレス技をかけてきやがった!
「分かった分かった!ギ、ギブ!」
「ごめんなさいは?」
「ご、ごめんなさあい」
「で、誰?」
あたしの眼の前にしゃがむ一哉。
何でそんなに嘘を見抜くわけっ?!
「秘密」
「……男?」
「違う!」
「じゃ、誰!」
「……」
「梨紗、怒るよ?」
一哉、しつこい……。
「安奈が来た」
真実を述べるしかなかった。
「……は?」
二秒くらいは、一哉は固まっていたように思う。
「おま……は?安奈がうちに来て、安奈を家の中に入れて仲良くお茶飲んだわけ?」
唖然とする一哉。
はあ。
「安奈……探偵雇ってこの家調べたんだって。それで、あたしと同棲している事も知ったみたい」
「探偵?アイツ、マジでストーカーじゃん」
「でも、一哉を本当に諦められないみたい」
「マジで出禁にするわ」
「え?」
「もう立派なストーカーだろ。探偵雇って家調べさせるなんて」
「安奈と!ヨリ戻す気ないの?」
「は?何言ってんの?何でオレが安奈と……」
「本営してたんでしょ?最低だよ、一哉。相手が安奈だとしても、安奈が確かに一番むかつくけど、本営してたのはひどいと思う……」
「オレの営業方法に文句つけられたくない」
そう言い残し、一哉は家を出て行った。
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