第九章 再修羅場③
「吉田さんが……オレに逢いにスーパーライトに来てくれて……話、全部聞いた」
よっちゃんが……。
そこまで面倒を見てくれるとは、正直思ってなどいなかった。
所詮、キャバ嬢とマネージャーというだけの関係だと思っていた。
それなのに、よっちゃんはわざわざ一哉に報告までしに行ってくれたの?
「どんな女?オレ、見つけ出すから。ソイツらの特徴言って」
「いいよ……見つけ出しても、傷が消えるわけじゃないし。もういいから」
「何言ってんだよ!オレは、絶対に許さないから!絶対に犯人見つけるから!梨紗……本当にごめん。オレのせいで」
そう言って、あたしを見つめる一哉。
嫌だ。
こんな顔を、見つめたりなんてしないで。
「いいから……もう、サヨナラだね」
「は?何で?」
「顔にこんな傷が付いているような女と付き合えないでしょ?」
一哉は、あたしを再び強く抱きしめた。
「オレの事、信じてって言ったよね」
そう言うのだった。
一哉……。
こんなあたしになっても、それでも傍にいてくれるの?
涙が、一粒頬をつたう。
そして。
あたしは、一哉の家にお引越しをした。
「お帰り、一哉!」
「ただいまあ、梨紗」
「今日の朝ご飯は、ベーコンハムエッグですよお」
あたしは、料理なんてまともにした事もなかったけれども。
毎朝仕事から帰ってくる一哉の為に、朝食を作るようになっていた。
「わあい♪」
そう言って、朝ご飯を美味しそうに食べる一哉。
あたしの頬のガーゼは、既に取れている。
けれども、ストレートの長い髪は結わえる事もなく垂らしたままだ。
一哉は、あたしの真っ赤なポルシェを見て驚いていた。
だって……。
一哉が買った車も、ポルシェだったから。
一哉のポルシェは、黄色だ。
『赤』と『黄色』。
派手好きなあたし達には、かなりお似合いだ笑。
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