第十二章 想い出④
まずは、歴代グランプリの挨拶だ。
「歌舞伎町、スーパーライト部長、藤堂一哉さん」
紹介された一哉は、マイクを手にする。
キュンッキュンッ♪
一哉は、世界で一番かっこいい!
日本一?
冗談じゃない!
世界一かっこいいんだよ……。
あたしの眼は、自分の彼氏にハートなのだった。
そして、しばらくして一哉があたしのテーブルにやってきて隣に座った。
こんなに皆の前で、堂々と。
あたし、本当に幸せ過ぎる。
「一哉、拓巳、グランプリ獲れそうなの?」
こっそりと一哉に耳打ちをする。
「どうだろうな。今年は、歌舞伎からグランプリ出るのもしかしたら難しいかも」
「え、どうして?」
「今まで、歴代グランプリ全員歌舞伎だからさ。日本一の大会やってる意味ないだろって話が出てるからさ。これ、内緒ね」
そうなのか。
じゃあ、拓巳には無理なのだろうか。
一人ひとり、出場者の発表と紹介がされてゆく。
そして……。
あたしは、我が眼を疑った。
「地区優勝した『オリオン』の代表、岬さんです!」
そう紹介されて階段を下りてきたのは……。
「ごめん……あたし、トイレ」
「え?梨紗?」
あたしは、そそくさとトイレへと向かって走った。
嘘。
嘘だ。
信じられない。
信じられないよ。
ホストだよ、確かに。
それでも、地区優勝までしてこんなところにまで駆け上がってくるとは……。
何故?
何故?
あたしの疑問は、消えなかった。
何故も何もない、か。
それだけ仕事を頑張ったという事なのだから。
岬は……。
あたしの元カレだ。
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