第二章 発情するなっつうの!⑩
よっしいと二人でWiiをしているところへ、珀ちゃんが帰宅してきた。
「ただいまー」
「お帰りっ!うわあ、やっぱよっしい強いね!」
「お帰りー。どうだった?バイト二日目は?」
「疲れた……土曜って、やっぱ混むんだな。まあ、そりゃそうか」
そう言い残し、寝室へ入ってしまった。
「おし、第二回戦!」
「千尋は元気だなあ……」
着替えを終えた珀ちゃんが、リビングへと顔を出す。
「んじゃ、ちょっと出かけてくる」
「ちょ!どこ行くのよ!」
「お前は、オレの母親か彼女か?」
「行ってらっしゃい」
「あのねえ!よっしいは、何で珀ちゃんにはそう甘いのよ!」
よっしいに口を手で押さえられながら……。
「早く行けって!」
「ちょっと!明日は十時起きよっ?!」
よっしいってば、珀ちゃんが出かける後押しなんてして……。
「何よ、よっしいったら!よっしいも共犯なわけ?!」
「違うけど……あいつを犯罪者にしない為だって」
「はあ?どういう意味よ?珀ちゃん、どこへ行ったの……?」
「さあね。どっか女のところ。性欲処理に行った」
「は?!……最低!本当に、男って最低よ!」
「あいつは性欲強いよなあ……一週間やらなかっただけで、耐えられなくなるらしい……しかも、あいつ一人でするのは嫌だって言うから、タチ悪いよなあ。オレなんか全然。性欲ないのかなあ……彼女できないと、そんな風には思わないけどね」
「あー聞きたくない!そんな話!男って、最低!」
「おーい。オレにまで怒る事、ないだろ?」
「にゃんちも……あたしとエッチしたいって思ってるのかな?にゃんちも一人エッチとか……してるのかな?にゃんちも……過去に誰かとエッチした事、あるのかな……あたし、もしもにゃんちとエッチしちゃったら……珀ちゃんの女達みたいに、捨てられちゃうのかな……」
――膝を抱え込み、どよよんとしている千尋……。
ついさっきまで、ゲームで盛り上がっていた千尋と同一人物とは思えない……。
「大丈夫だよ。にゃんちは、千尋を捨てたりしない。そんなひどいヤツだったら、オレが千尋に紹介すると思う?にゃんちが童貞かどうかまではさすがに知らないけどさ。大丈夫だよ。オレみたいな男もいれば、珀みたいに我慢できないヤツもいる。千尋?誰もが通る道なんだよ。皆、最初は不安なんだよ」
「うん……」
はあ……。
世話の焼ける、まるで子供だ。
本当に、千尋は子供なのだ。
だから、珀は余計納得行かないんだろうなあ……。
こんな子供の千尋に、発情なんてしちゃうようじゃなあ……。
オレは、中一から中三まで、付き合っていた女の子がいた。
その子は、同じバスケ部で。
千尋も、仲良くしている女の子だった。
同じ高校へは、進学しなかった。
両親の事故、進路、色々な事が起こり過ぎて、その子とは別れてしまった。
今思えば、申し訳ない事をしたと思っている。
中学の時とはいえ、三年も付き合ったっていうのに……。
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