第十二章 想い出③
誰が出場するのかは、知らされてはいなかった。
拓巳が出場する事を知っているだけだ。
あたしと安奈は、その場の華みたいなもので……。
ドレスを着ていかなくてはならない。
ドレスコードが、当然のようにある。
何を着ていこう。
興奮しているはずだったが、そんな根本的な事すら決めてはいなかった。
安奈に電話をかけてみた。
「梨紗?何、どしたの?」
「安奈、今日何色のドレス着るのかと思って。被ったら困るでしょ?」
「あたしはね、真っ白のドレス着る事にする」
「白ね、分かった」
「梨紗は?」
「あたし、まだ決めてなくて……」
「そう。分かった。じゃ、会場でね」
あたしは、かなりの時間をかけて一人ファッションショーをして……。
ピンク?
赤?
黒?
白は却下で。
紫?
青?
おし、青にしよう。
真っ青な、きっと目立つであろうドレスを着ていく事にした。
タクシーで、会場へ到着。
すんごいたくさんの人、人、人。
あたしは、どこへ行けばいいのだろうか。
とりあえず、スタッフらしき人に名前を告げる。
「あの、ブリリアントの日向梨紗ですが」
「はいはい。お席の方までご案内します。こちらへどうぞ」
ほっ。
話が通っていて、ひとまず安心した。
開場はされていたけれども、まだ開演までは時間がある。
席に着いたはいいものの、どうしたらいいのか。
何しろ、このイベントに参加するのはあたしだって初めてなわけで。
一哉……なんて、恋しくなる。
そうしたら!
一哉がやってきた!
「一哉!」
「梨紗、チョー可愛いじゃん。オレ、青いドレス好き♪梨紗の綺麗な顔が映えるよ」
「えへ、ありがとう」
「まず、歴代グランプリの挨拶があって、それが終わったらオレはこのテーブル戻ってくるからさ。一緒に見ようね!」
一哉、隣にいてくれるんだあ!
わあい♪
勿論、あたしも一哉も審査員ではないから。
見物席だ。
一番前の、特等席で。
「梨紗」
「安奈!」
肩を叩かれて振り向くと、真っ白なドレスを身にまとった安奈がいた。
「あんた、一哉と見るわけ?バレバレじゃないの」
「もうオープンにするからいいらしい……」
「あ、そ。あたしは、あっちの端から二番目の席に座ってるから。じゃね」
そう言うと、マリリンモンローのようなドレスをフワッと広げながら去っていった。
やはり、安奈は綺麗で輝いていた。
眩しかった。
そして、全日本ホストグランプリ大会が始まった。
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