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観た映画の感想 #49『ザ・フラッシュ』

『ザ・フラッシュ』を観ました。

監督:アンディ・ムスキエティ
脚本:クリスティーナ・ホドソン
出演:エズラ・ミラー、サッシャ・カジェ、マイケル・シャノン、ロン・リビングストン、マリベル・ベルドゥ、カーシー・クレモンズ、アンチュ・トラウェ、マイケル・キートン、ベン・アフレック、他

地上最速のヒーロー、フラッシュことバリー・アレンは、そのスピードで時間をも超越し、幼いころに亡くした母と無実の罪を着せられた父を救おうと、過去にさかのぼって歴史を改変してしまう。そして、バリーと母と父が家族3人で幸せに暮らす世界にたどり着くが、その世界にはスーパーマンやワンダーウーマン、アクアマンは存在せず、バットマンは全くの別人になっていた。さらに、かつてスーパーマンが倒したはずのゾッド将軍が大軍を率いて襲来し、地球植民地化を始めたことから、フラッシュは別人のバットマンや女性ヒーローのスーパーガールとともに世界を元に戻し、人々を救おうとするが……。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/83919/

トム・クルーズが大絶賛してたとか、アメコミ映画なんてまるで興味のなさそうなスティーヴン・キングまで絶賛してたとか、

面白そうなのは確かだけどいくらなんでも少しハードル上げすぎじゃない? と思って観に行ったら確かにめちゃめちゃ面白かった! 正直なところフェーズ4以降のMCUとかスパイダーバースとか、マルチバースものに溢れすぎてて「またマルチバースものかあ……」っていうテンションの下がりはあったんですけど、それを差し引いてもヒーロー映画として十二分に楽しい一本でした。

何よりもエズラ・ミラー

まず、やっぱりエズラ・ミラーがものすごく演技達者なんですよ。
一人で二役、あるいはそれ以上の役を同時に演じる作品っていくつもありますけど、今作は「少し違う自分自身」と常にツーマンセルでずっと行動し続けるし会話し続けるじゃないですか。その微妙な演じ分けも見事だし、合成がものすごく自然なのもあってさも普通のシーンのように見えてしまうんですが、いやいやとんでもないことしてませんかと。だってどう見ても実際に二人の人間が同時にその場にいるとしか思えないノリで自分自身にツッコミ入れてるんですよ?

最近観直して「やっぱりいい映画じゃん!」と思った『シックス・デイ』。
こちらではシュワルツェネッガーが2倍に。つよい

個人的にスーパーヒーロー映画って「キャラクターに説得力を与えられる役者である」ことが他のジャンルに比べて非常に重い映画だと思っているんですが、今回エズラ・ミラーがその点において完璧に仕事をしたことは疑いようがないと思います。例えあれやこれやのスキャンダルとか、メンタルヘルスの問題とかですごく難しい人なのが事実だとしてもね。

バートン版世代として

そしてティム・バートン版のバットマンリアルタイム世代としてはやっぱりマイケル・キートンのバットマンがもう一度観られたという喜びね。

クリストファー・ノーランが『ダークナイト』三部作を手掛けて以降、バットマンってとにかくシリアスで真面目で暗くて、ガジェットも出来る限り現実味のあるディテールで……っていうモノだ、ってムードがすっかり定着してしまったじゃないですか。それはそれで好きなんですけど、なんかあまりにもバットマンのイメージが「それ」一色になりすぎてやしませんかと。

キートンバッツが良いのは強さ表現が漫画チックなところ。
絶対に動力源とかついてないのにマントを広げるだけで空飛べるし、マントもスーツもラバーなのに銃弾をガキンガキンと弾く。(今回は出番なかったけど)バットモービルもガチャンガチャン変形するし、でもそれが良い。
あとはバットウィングがコウモリ形してたりするのも良い。コウモリ形の戦闘機が満月をバックに空中で静止してバットシグナルを表現するとかもう漫画的なケレン味たっぷりで超楽しいじゃない。少なくともノーランはああいうこと絶対にやらない。
そういう昔懐かしのバットマンらしさを、昔はできなかった映像技術で今見せてくれた。それだけで正直入場料払っただけの値打ちはあった。マイケル・キートンが出てるところは全部良かったです。

DC映画の幕の内弁当

一方で今作におけるもう一人のバットマン、ベン・アフレックのバットマンも今回はすごく良かった。スーツもベンアフバッツの中ではシャープかつ金属製のプロテクターごてごてのガジェット感もあって一番カッコよかったし、あとは思い悩む段階からは既に抜け出してる老成感も良かった。なんていうか、責任感のあるトニー・スタークみたいな立ち位置だなって(笑)

ポストクレジットで何かしらのサプライズがあるかもしれないとは思ってましたけど、本編にワンダーウーマンが出てくるのは予想してませんでした。ワイスピ新作のラストといい、ガル・ガドットは今年のサプライズ出演大賞ですね。

あとは終盤で他のユニバースがいくつも形になって現れた時、それが過去に作られたシリーズであることもなんとなく想像はついたんですが、まさか作られる前に頓挫したニコラス・ケイジのスーパーマンまでフォローするとは思わなかったし、最後の最後に登場するブルース・ウェインがジョージ・クルーニーだったのは「うおっマジ!?」って声が出そうになりました。てことはあの世界にはシュワルツェネッガーのMr.フリーズとユマ・サーマンのポイズンアイビーもいるってことだし……

というわけで今作、フラッシュの単独作でありながらDCU以外のDC映画も内包して送り出すような映画にもなってて、ファンサービスがちょっと行き届きすぎてるくらい行き届いてる映画なんですよね。DC映画の幕の内弁当。

モヤるところもないではない

結論にいたるまでの話の流れにモヤモヤするところも正直ないではない。
(例えそれが切実な願いだったとしても)私的な理由で過去を改変したせいで世界がめちゃめちゃになってるのに、「何度やってもこの世界は壊れる、諦めよう」ってスパッと言い切っちゃうのはどうなんだと思う。せっかくマイケル・キートンのバットマンも再起したしサッシャ・カジェのスーパーガールもすごい良かったのに、こいつらの活躍をもっと見たかったのに、彼らの世界ひとつ簡単に使い捨てにするような真似してくれるなよ! と。

いや、でも元々あの世界はどうあってもゾッド将軍が勝ってしまう世界線だったのかもしれないし……とか、トマト缶の買い忘れを防ぐのはダメでトマト缶の陳列を変えるのは良いの……? とか、考えれば考えるほどマルチバースよく分からなくなってくる問題ってやっぱりあると思うんですよ。今作はかなり丁寧に作られていたとは思うんですけど。

締め

ヘンリー・カヴィルのスーパーマンが事実上リストラされたりもあって、ジェームズ・ガン体制で今後DCユニバースがどう展開していくのかは期待半分、不安半分っていうのが正直なところなんですが、そんな中でまずはストレートに面白い作品が出てきたっていうのは素直に喜ばしいことなんじゃないでしょうか。そしてやっぱりエズラ・ミラーって良い俳優だなって改めて感じる作品でもあったので、頑張って抱えてる問題クリアにして欲しいな。

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