観た映画の感想 #41『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』
『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』を観ました。
(毎回思うけどなんて頭の悪いタイトルなんだ。だがそれがいい)
脚本：ジャスティン・リン、ダン・マゾー
出演：ヴィン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソン、クリス・”リュダクリス”・ブリッジス、ジョン・シナ、ナタリー・エマニュエル、サン・カン、ジョーダナ・ブリュースター、ジェイソン・ステイサム、シャーリーズ・セロン、ヘレン・ミレン、ブリー・ラーソン、ダニエラ・メルヒオール、スコット・イーストウッド、リタ・モレノ、ジェイソン・モモア、アラン・リッチソン、他
パートナーのレティと息子ブライアンと3人で静かに暮らしていたドミニク。しかし、そんな彼の前に、かつてブラジルで倒した麻薬王レイエスの息子ダンテが現れる。家族も未来も奪われたダンテは、12年もの間、復讐の炎を燃やし続けていたのだ。ダンテの陰謀により、ドミニクと仲間たち“ファミリー”の仲は引き裂かれ、散り散りになってしまう。さらにダンテは、ドミニクからすべてを奪うため、彼の愛するものへと矛先を向ける。
(映画.comより)
はじめに～上映形態について
まず上映形態の話から。
IMAX(字幕)で1回目を観て、こういう映画はアトラクション感あっても絶対に面白いだろうと思って何年振りかで4DX(吹替)でも観たんですが、思った通りで4DXもとても楽しかったです。ただシーンによっては本当に尋常じゃないくらい揺れるので、まずは普通のスクリーンで観るのをおすすめします。
あと洋画ファンには蛇蝎の如く嫌われることでお馴染みの日本版テーマソングが本作でもやっぱりあるんですが、それは元のエンドロールの後に流れる日本語吹き替え版のキャストロールの時にかかるようになってたので全く気にする必要なかったですね。これは良い構成だと思いました。他の映画でもこうしてくれたらいいのに。
個人的評価～良いところ編
それはさておき。
ワイスピが今作とその次の作品をもってシリーズ完結という話は前々からなされております。(と思ったらやっぱり三部作にするかもしれないとかいう話が急に出てきてどうなんだと思わなくもない。けどそういう後出し感もまたワイスピらしさではあるのが愛すべきところでもあり困ったところでもあり)
いずれにせよ、時系列による繋がりはあれど基本的には1話完結だったワイスピシリーズとしては初めて単品では終わらない映画になったのが今作なわけですけど、これ単体で観ても十分に面白いし、なんなら完結に向けてのこれ以上ない助走になっていると思います。1本の映画としての面白さでいうなら個人的にはSKY MISSION以降で一番だと思う。
車にロケットエンジン積んで宇宙に行くとかいう究極のバカを前作で既にやっちゃってるので、これ以上どうやってスケールアップするんだよって思ってたんですけど、そこは原点に立ち返って道路を走る車で如何に荒唐無稽なアクションをするかって方向性に。
でも地味になったかというと全くそんなことなくて、巨大な鉄球型爆弾を車で玉突きしながらチェイスするとかもう十分「う～んバカ！！(好き)」ってなる画だし、ゼロヨンが復活したのも嬉しい。
そもそもルイ・ルテリエ監督って監督デビュー作が『トランスポーター』だし、『インクレディブル・ハルク』でマーベルとも仕事をしてて、要するに車を使ったアクションにもブロックバスター超大作にも一定の実績がある人なので、その点において今のワイスピにはうってつけの人材とも言えるわけですよ。
あとはやっぱり新たに参戦のジェイソン・モモア演じるダンテがすごく良くて。悪役をやるのが久々みたいなんですけど、全力でヴィランをエンジョイして演じてるのがもう彼が出てる全てのシーンで伝わってくる。もう演技の方向性も劇中でやってることもほとんど『ダークナイト』のジョーカーなんですよね。道化師メイクしてないだけで。シャーリーズ・セロンが演じるサイファーが”静”とか”陰”のラスボスならダンテは”動”とか”陽”のラスボスって感じで、徹底した話の通じなさも相まってコイツは100%ファミリー入りは無いなって説得力と存在感がきちんとある。いや本当にモモアが出てるシーンは全部良かった。
シャーリーズ・セロンといえば今まではずっと頭脳と策略タイプのヴィランとして立ち回ってたけど、そうは言ってもせっかくシャーリーズ・セロンが出演するんだったらやっぱりアクションもして欲しいじゃない！ だってフュリオサよ？ アトミックブロンドよ？ なんて思ってたら今回はサイファーにも大暴れするシーンが(予告編にも使われてるレティとのタイマン以外にも)あったりして、そういうファンサービスも嬉しかった。最強ハッカーな上にあんなに格闘も強かったらほとんど無敵なのでは？
あと今回のサイファー、髪型が登場作品中で一番好き。
あとはレギュラーメンバーのいつもの感じとなんだかんだで第三勢力的な立ち位置はギリギリのところで崩してないステイサムの絶妙なツンデレダークヒーローっぽさとか、あっという間に陽気なおじさんに変わってしまったジェイコブをこれまた楽しそうに演じるジョン・シナとか、単に豪華なメンツを見てるだけでも楽しいのに、それがみんな上手い人達ばかりだから尚更ですよね。特に女性陣はオスカー受賞者が4人もいるわけだし。
シリーズ完結というからには絶対に出て欲しいとファンなら誰もが思っていたであろうあの人とか、あいつが生きてたんだからあいつだって生きてたって良いだろうとファンなら誰もが思っていたであろうあの人のサプライズ登場とか、ファンサービスも過剰なくらいてんこ盛りだったし、X-MENのセレブロの中にゼーレの会議室があるみたいな組織の施設のバカバカしさとかも含めて、ここ数作で最もテンションの高い作品であることは間違いないと思うんです。
個人的評価～そうは言っても編
そうは言っても勿論ワイスピなので細かいツッコミどころはいくつもある。例えばSKY MISSIONの時からずっと続いてる神の目(ゴッド・アイ)の扱いが雑過ぎる問題。今回も飛行機に装着してたチップをあっさりテスに盗まれてましたけど、あれ一応とんでもない電子兵器なんですよね……？
サイファーとレティが捕まってる施設を脱出しようとするくだり、時間の猶予を聞かれて「4分ってところね」って言ったそばから殴り合いを始めるところまではまだいいとして(なぜならワイスピだから)、明らかに4分以上経ってるのに悠長に着替えを用意したりしてていやさっきの4分は何だったのサイファーさん？ みたいなことがあったりとか。
あとは「キャノン・カー」の大砲の引き金をリトルBに引かせてるけど、どう見ても被弾した車の運転手爆死してない……？ いやそれ子どもに人を殺させてるのでは……？ イェーイ！ とか盛り上がってる場合ではないのでは……？
個人的に一番心の中で強いツッコミが入ったのはクライマックスで判明したとあるキャラクターの正体で、いやお前の正体ソレなら組織の身辺調査ザルすぎるだろ！！ おバカ！！
そんな感じで細かく挙げればキリがないけど、でもこういうのもシリーズの味と言えば味だし、今回に関してはそういう粗を力技でねじ伏せられるくらい面白さのパワーが大きかった気がする。あとは「誰が何のために動いていてどこに向かっている」っていう話の流れが今回はそこまでとっ散らかってなくて「今何の話してるんだっけ？」ってことになってなかったと思うんですよね、比較的。
やっぱり考えてしまうこと
そういう細かいツッコミどころなんかよりも大きな問題は、やっぱりポール・ウォーカーがいないこと。それに尽きる。
勿論SKY MISSION以降の他の作品でもそれはあったんだけれど、今回のは
それらとはまた質が違ってて。
先に書いた通り、今作のテンションって明らかに今までで一番高いんです。過去作からの因縁の引っ張り方といいオールスター揃えるつもり満々の話運びといい、最も良い形でシリーズを締めくくろうっていう意気込みがものすごく伝わってくる。だからこそ、クライマックス感が盛り上がれば盛り上がるほど、オールスター感が盛り上がれば盛り上がるほど、ここにブライアンがいれば……ポール・ウォーカーが生きていれば……って寂しさもまた大きくなってしまって。
作中ではブライアンは生きてるわけだし、やろうと思えば『ローグワン』のターキン総督みたいにCGをフル活用してブライアンを召喚することもできるとは思う。けど、そういうブライアンを見たいわけでもないし……
思えばSKY MISSION以降の作品では「ポール・ウォーカーを出さずにブライアンの存在感を示す」ことにものすごく苦心していて(当たり前だけど)、それは単に「あいつは巻き込めない」で済ませていたICE BREAKを経て、”子どもを預けられる信頼できる仲間”として話の上だけで登場するかと思いきや……！ のJET BREAKっていう風に少しずつ良いバランスになってきたと思うんです。だからこれに関しては、最後はきっちり納得できる形でまとめてくれるんじゃないかという期待、というか製作陣へのハードルとしておきたい。ものすごく高いハードルだとは思うけど。
ワイルド・スピード/インフィニティ・ウォー
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観た時「これどうするんだよ……」と打ちひしがれ、それと同時に「早く続きを見せてくれよ……！！」という期待感で頭の中がいっぱいになったことを今でも覚えてます。今作を観た後の気持ちはあの時とほぼ同じで、違うのはアベンジャーズの時のような絶望感が全くないこと。なぜならこれはワイスピだから。
次回作は2年後？ と聞きます。長い……！
でもそれまではなんとしても生きねば……！
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