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飲酒の哲学

お酒が、好きです。

お酒が好きって、あまりイメージが良くないので普段はちょっと隠してます。

職場の人にはバレてない自信、あります。

前のバイト先では、完全に飲めない人として過ごしてました。(上司と飲んでも、どうせ酔えないので。)

でも本当は、とっても好きです。


このnoteはただ、「好き」という気持ちを因数分解し、その中で見つけたお酒の美学を伝えたいと思って書くだけです。

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何を飲むのか

「とりあえず、生ひとつお願いします!!!」

やっぱりビールが王者。間違いなく美味しい。

経営者側からしたら儲け少なくて嫌だろうけど、店員側からしたらビールサーバーから注ぐだけだから簡単で楽だよね。カクテルみたいに運ばれてくるの遅くないから、私も嬉しい。

ビールはわかりやすい。何杯飲んだらどのくらい酔うか計算しやすい。私の場合、3杯めで楽しくなって、6杯めから一番調子が良い状態になって、9杯めから記憶が飛び、12杯めからはさすがに次の日ちょっとつらい。これをベースに、当日の体調や前日の睡眠時間、お腹の空き具合などが影響してくる。徹夜明けや二日酔い明けは、酔う前に吐くし、睡眠不足だと寝落ちしてしまう。基本外ではビール一筋。

焼酎、日本酒はあまり飲まない。サワーや梅酒は、甘くて喉が渇くのであまり飲まない。ウイスキーは好きだけど、ハイボールはあまり飲まない。カクテルはジントニックかモヒート。ビールの銘柄で最も好きなのはヒューガルデン。

今日現在の家のお酒のストックは、缶ビール8本、瓶ビール3本、チャミスル1本、ウイスキー7種、ラム1本、アップルワイン2本。コーヒーのリキュールが1本。いつ誰が宅飲みしに来ても対応可能。自粛期間中に、つい買い込んでしまった。

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どう飲むのか

私は、お酒そのものというよりも、お酒を飲む行為が好きなんだと思う。だから、「何を飲むのか」よりも「どう飲むのか」が重要になってくる。

缶vs瓶vsジョッキ

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缶ビールが好き。缶を開けた時のあの「パシュッ!!!」という音が好き。

私の大好きな叔母が、よく「パシュ〜〜〜ッッッ!!!」って言いながら楽しそうにアサヒスーパードライを開けてた。それを小さい時から見てたので、自分で「パシュ〜〜〜!」ってするのが夢みたいに思ってた。小野家ではこれを動詞化して、ビールを飲むことを「パシュる」と言う。

全ての準備が整って、幸福な宴の始まりを意味するあの音は、もはや儀式だよね。「パシュッ!」の後の「カコッ」っていう小さい音までセットで好きです。同じ「パシュ」でもスト缶の「パシュ」は地獄への導入なので、「パシュ」なら何でも良い訳ではない。

自分で「パシュる」のも好きだけど、誰かに「パシュってもらう」のも好き。この幸福な儀式を、誰かと共有したいんだと思う。小さい頃、飲んでるパパに「ちょっとビール持ってきてくれない?」って言われて冷蔵庫に取りに行ったりとか、飲んでる叔母から「空になっちゃったな〜」と言われて缶ビールをパシュッってあげたりとかするのが、好きだった。小さい時はお酒は飲めないけど、それだけで酔っ払いの仲間入りを果たした気分になった。

缶ビールの独特な金属臭さも、好き。コーヒーも普通に飲むより缶コーヒーの方が好きだから、ただただ缶が好きなだけかもしれない。


瓶ビールも好き。ビジュアル的にはダントツ。ラベル買いしてしまう。海外から輸入されたお洒落な瓶のビールとか、捨てがたい。王冠が洒落てたらもう最高。それだけでインテリア一個増える。ゴミが嵩張るとか重いとか、そういうのは無視!

瓶ビールに関しても、やっぱり開ける瞬間が最高。開ける音はもちろんなんだけど、栓抜きをわざわざ持ってこなきゃいけないという手間が、より一層ビールを美味しくさせてると思う。やはり手間かけた方が美味しく感じるんだよ。

私はうまく出来ないし、やらないけど、瓶ビールを栓抜き無しで器用に開ける人もいるよね。外で栓抜きがない時に、力任せな男の子が器用にベンチとかでガツンと開けるの、すごいと思う。エンターテイメント性が強い。

ビジュアルで「酒飲んでるな〜〜〜」って感じが強すぎちゃうから、時と場所を選ぶ必要がある。旅行先の海辺で瓶ビール片手にお散歩するのは最高ですが、その辺りの公園で瓶ビール飲んでたら「うわあ出た〜」って感じ。


お店のキンキンに冷えたジョッキで飲むビールも大好き。綺麗なお姉さんが注いでくれていたらもう最高。たぶん、人生のどの瞬間よりも生き生きとした笑顔になってしまう。恋人に会った時と同じくらいニコニコしちゃう。

やっぱり泡って大事だと思う。泡は多過ぎても少な過ぎても、ちょっと萎える。でも綺麗に注がれている時のあの黄色と白の黄金比、計算し尽くされたモナリザより美しい。ジョッキの淵までなみなみと注がれた危うさが好き。危うく運んでくるお姉さんとかも好き(は?)。いつも溢してばかりで本当にごめんなさい!!!!!

あのジョッキで乾杯するのが好き。乾杯って本当に好き。ここでの音も好きなんだけど、それより行為そのものが好き。あんなに素晴らしいコミュニケーションってある?元々はお酒に宿った悪魔を払うための儀式だったとか。盃を交わせば、兄弟にだってなれてしまう。代替性のない行為。奥深いよね。

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ひとりvs友達vs大人数

金曜の夜は、職場から帰ってひとりで飲むことが多い。誰かと電話しながら飲むこともあるけど、最後はひとりで飲んでそのまま寝てしまう。本当に暇で何もない休日は、朝から音楽をかけて料理でもしながら「パシュッ」としてしまう。これは一人暮らしだからできることかもしれない。最高。

ひとり飲みの良いところは、アルコールを飲んでリラックスすることができる点。飲む。食べる。寝る!人間の欲求を純粋に満たす。

ビールに合う音楽はサザン。最高のマイプレイリストをシャッフルで聴く。なんでこうサザンの曲って飽きが来ないのかな。最高のおつまみに、最高の音楽を添えて、ビールをどうぞ。


飲み友と飲むのが好き。大学生活で得た最も大事なものは、飲み友です。

飲みニケーションってそこそこ高度なコミュニケーションだと思う。相手の飲むペースや飲む量を見ながら最適に飲む。これが大変。職場の人間が相手だと全く酔えないのはこの辺り真面目さが出ちゃうからだと思う。

だからこそ、自分と同じペースで同じ量飲める飲み友って超貴重!そしてもう何も考えず飲んで適当に喋って騒いで楽しんで、あとは忘れる!飲んで語り明かすというよりは、飲んで楽しい気分を共有するという非言語的な側面が好き。だからバーよりも、居酒屋が好き。スナックも好き。飲みながらのカラオケも大好き。

いつもは真面目に勉強している、尊敬できる友達が、飲むとベロベロになって踊り出しちゃうのも好き。最高じゃん。

ただし、大人数での飲み会はあまり好きじゃない。コミュ障なので。


その場で初めて知り合った人と飲むのも、大好き。日常生活では出会うことのない人との出会いがあったりするので。この前仲良くなった女の子は、私がいつもクリーニングでお世話になっているお店のバイトの子だった。運命かよ。

   

なぜ飲むのか

我々はお酒を飲む。飲んで飲んで、散々楽しんだ後、潰れる。

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次の日起きると財布に知らないタクシーのレシートが入っていたりする。全然覚えていない写真や通話履歴が残っている。ものを失くす。友達のお酒の失敗もたくさん見た。自分の失敗は、ここには書けないどころか、思い出すのも恥ずかしい!

もう絶対に飲まない!禁酒する!と何度誓ったかわからない。が、結局1週間くらいで忘れてしまう。結局また飲んで、飲んで、半年に一度くらいまた「禁酒する!」と泣く。

シュメール人から始まり数千年、我々はお酒を飲み続けてきた。お酒で失敗した人は数知れないだろう。アイドルだって、公園で裸になっちゃうくらいなんだから。

なぜなのか。なぜ飲むのか!!!

美味しいから?楽しくなれるから?饒舌になれるから?忘れたいことを忘れられるから?その通りだと思う。だけど、お酒の魅力は他にもあると思う。

お酒を飲まない人には決してわからないと思う。私も不思議だと思う。やめておけばいいのに。ただでさえ太るし。

今回はここで、それを何とか説明しようと思う。


「銀河の星屑」

桑田佳祐に「銀河の星屑」という曲がある。大好きだ。

お酒を飲んだ男が泥酔して、帰宅途中に何らかの事故に遭って死ぬ曲だ。一番好きなのはこの一節。

シラフじゃ説明できないあの夜だった

そう、つまりそういうことなんだ。飲むことでしかわからないんだ。わからないから特別なんだ。その特別さが、飲酒に意味を与えているんじゃないか???


「アナザーラウンド」 

ずっと気にはなっていたが、上映館が少なくて劇場鑑賞は諦めていた。その映画が広島市内で公開されているというので、早速観に行ってきた。

あらすじは以下の通り。

「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと仕事もプライベートもうまくいく」
           酔っぱらって人生大逆転!? 4人の男たちが仮説の証明に挑む
マッツ演じる冴えない高校教師とその同僚3人は、ノルウェー人哲学者の理論を証明するため、仕事中にある一定量の酒を飲み、常に酔った状態を保つというとんでもない実験に取り組む。すると、これまで惰性でやり過ごしていた授業も活気に満ち、生徒たちとの関係性も良好になっていく。同僚たちもゆっくりと確実に人生が良い方向に向かっていくのだが、実験が進むにつれだんだんと制御不能になり…。(公式HPより引用)

どう考えてもヤバいストーリーなので、手放しに「おもしろかった!」とは言えないけれど、とても余韻が残る映画だった。ほろ酔いが続いてる感じ。血中アルコール濃度も0.05%なのかもしれない。

観ていてここまで、自分を甘くほろ苦い気分にさせる映画はないんじゃないかと思った。普段お酒を飲まない、もしくは飲んでもほどほどで済ませる、という人には理解が難しいかもしれない。劇場の隣に座っていたお姉さんは途中で爆睡していたし、もしかすると日本人にはあまりウケないのかもしれない。酒飲みの国デンマーク(16歳から飲酒が合法らしい)の映画だから、海外ではウケたのかもしれない。私も鑑賞中はシラフだったから、つい苦笑いしてしまった。苦笑いしてしまったけど、最高だった。


この最高さは、お酒のもつ二面性から引き出されているんだと思う(もちろんイケオジが演じているから許される面もある!)。飲酒には、最高な面もあるし、最低な面もある。だからこそ、全て含めて愛おしいんじゃないか???飲酒というスパイスが、人生に味を与えている部分が、あるんじゃないか???

だから、私たちは今日も今日とてお酒を飲むのではないか???

この映画が検証しようとする「血中アルコール濃度が常に0.05%であれば人生全てうまくいく」が真実であるならば、誰だってそうする。しかし現実はそうではない。それは映画を観ても観なくても、わかりきったことだ。不可能だ。なぜか??? あまり詳しく語るとネタバレになってしまうから、それはひとりの映画愛好家としてやめておく。しかし、このわかりきった当然のことが、一本の物語になるくらいには奥深い話なのだ。お酒が奏でる人生賛歌とも言えるこの映画を、私は絶賛したい。

この映画以外にも、「ハング・オーバー」をはじめとして酔っ払いを題材にした映画は(特にコメディにおいて)よくあるし、もしくは180°別路線のアル中人間ドラマはよく見られる。でもそうではなく、日常的にそこにある、特別でも何でもない「飲酒のもつ美しさ」を描いた映画は観たことない。あなたもお酒好きの自覚があるならば、ぜひ観て欲しい一作だ。逆に、お酒好きでないなら観ないで欲しい。笑 

ここまでくると、もう飲酒というストーリーの全てが愛おしい。はあ、私何言っているんだろう。でも本当にそう思えた。飲酒というストーリーは美しいのだ。


「お菓子とビール」

私は小説はそこまで詳しくないのだけれど、最も好きな作家を挙げるとしたら、迷うことなくサマセット・モームを挙げる。読んだらきっと、人間に対する洞察力の鋭さに驚くだろう。代表作は「月と六ペンス」。

サマセット・モームの作品の中に、「お菓子とビール」という一作がある。読んでいて、お菓子もビールも出てこないから驚きだ。全く関係のない話だ。しかし調べてみると、このタイトルはシェイクスピアの「十二夜」から引用しているらしい。意味は、「人生を楽しくするもの」「人生の愉悦」。なるほど、確かにそうだろう。

これは直接的にお菓子やビールについて書かれた話ではないが、ただこの小説を通して、「お菓子とビール」を目の前に並べた時のような、言葉では言い表せない気分を味わうことができる。もはや何事にも意味なんてないんじゃないかと思えるような、刹那的で切ない気持ちになる。お菓子もビールも、決して人生の必需品ではないはず。でもそんなこと言い始めたら、人生だって何の意味も持たない。


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結局、全然上手く表現できていなくて悲しいのだけど、私にとって「なぜ飲むのか」は、この「銀河の星屑」「アナザーラウンド」「お菓子とビール」の3つによって理解できる。音楽、映画、小説と媒体は異なる。しかしどの作品も、飲酒をすることの意味を的確に示してくれている。つまり、それは特別な体験であり、美しく、人生を楽しくするものなのだ。

それは美味しく飲むために汗を流すという序章から始まり、乾杯の合図によって幕を上げ、グラスを傾け、真実を語り合い、血管が開き、神経が昂り、無限大の可能性に気づき、気がつくと朝焼けのベッドに頭を沈め、全てが終わって独特な胃の気持ち悪さが後をひく、あの静寂の最終章に辿り着く。

つまりは、恋と一緒なんだよな!!!

生きるように、恋をして、恋をするようにお酒を飲む。つまりそういうことだよ。失恋しても、また恋をするのと同様に、失敗しても、またお酒を飲むんだよ。私は恋愛至上主義者ではないし、飲酒至上主義者でもないけれど、その美しさは似たようなものだと思うよ。どっちも死ぬほど馬鹿げていて、どっちも愛おしい。

恋愛が社会的に認められた狂気だとするならば、飲酒も社会的に認められた狂気だよ。

これが私の考える「なぜ飲むのか」、そしてお酒の美学です。

酒は飲んでも、飲まれるな!!!

溺れないように愛する、これが鉄則。


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今日も、今日とて。

ええ、まあ、お察しの通り。目の前にはビール、チータラ、トッポ。

こんな生意気で恥ずかしいnote、もう一生書きません!!! 

黙って静かに、飲みましょう。 イキリ二日酔い野郎にならないように。

6000字の愛に、乾杯!



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