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#17. 3C分析-Customer : フェルミ推定で行う顧客マーケット規模把握のやり方

3C分析のスタートは、「この製品/サービスを売るとしたら?」でしたね。それを8W3Hでブレークダウンして考えるのですが、まずは、「Who」、つまりターゲット顧客を更にブレークダウンして考えていきます。

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本noteは、ポートフォリオワーカー*になった、外資系IT企業マーケティングマネジャーによる、『初めてマーケティングを学ぶキミに伝える マーケティングフレームワーク活用講座』の連載企画です。

*「ポートフォリオワーカーって何?」は、こちらを参照下さい。自己紹介とともに説明しています。

前回はこちら、最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。
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Customer(顧客)の把握

「Who」のブレークダウンですが、2通りのアプローチを行います。まずは「全体分析」から、そして「詳細分析」に深化しています。「詳細分析」には、カスタマイズVC(バリューチェーン)を使用します。

Customer:全体分析

ここでは、「この製品/サービスを売るとしたら?」「誰だろう?」「どのニーズに対して?」「提供できる価値は?」に注目します。ボクのマーケティングフレームワークのバイブル本、マイケル・ポーターの競争戦略/ジョアン・マグレッタ著 P137にでいる図が参考になります。

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どの顧客?=顧客ターゲット/需要

1.ペルソナ想定
マスを狙うか、ニッチを狙うか、という大きなくくりで考えるのも重要ですが、まずは、「誰が買ってくれるか?」を想定します。ペルソナの想定になります。

ペルソナの想定は、「この製品/サービスのYYが、XXに受けそう」でもいいですし、実際に購入してくれた顧客がいれば、「なぜ買ってくれたのだろう?」を考えてみるのもいいでしょう。

一番いいのは、直接その理由が聞いてしまうことですが、間接販売をしていると調整が難しいものです。まずは、自問自答で「仮説」を立てることからスタートします。

2.マーケット調査(需要調査)
大体の「顧客イメージ」ができたら、次にその需要を調査します。どのぐらいの人が買ってくれるのか、需要はあるのか?を調査します。

需要がなければ、その製品/サービスが存在していても、売れません。ちゃんと需要があるかを調べる必要があります。

普通の本では無責任にも説明は、ここで終了です。あるいは、官庁で出しているデータの調べ方を示しているかもしれません。今ならググる方法もありますね。

でも、断言します。あなたが調べようとしているスペシフィックなデータは、存在しません。そんないい具合でデータを拾えることは稀です。

では、どうするか?

フェルミ推定で自分でデータを想定します。

フェルミ推定
「人口数や国土面積など、ざっくりとしたデータから、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算すること」(Wikipedia)

と、いっても、マイクロソフトのインタビューを受ける候補者やボストンコンサルティングのコンサルタントでもない一般人が、どうやってフェルミ推定を行えばいいでしょうか?

答えは、正規の方法で行わず、ショートカットする方法で行います。

つまり、「それなりのデータを組み合わせて、論理的に推論し、短時間で概算を出してしまう」のです。

以下は、ボクが外資系IT企業のお仕事の一環で、某IT系サイトで連載を持っていた際に、記事中で利用したフェルミ推定の例です。企業のテレワーク実施率をコロナ禍前、緊急事態宣言中、解除後で推定しています。

 『テレワークの導入やその効果に関する調査結果令和元年版』(総務省、2018年)によると、2018年度のテレワーク導入率は19.1%です。

 それが新型コロナウイルスが発生し、緊急事態宣言が解除された後の状況を東京商工会議所が2020年7月14日に発表した『第6回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査』によれば、「新型コロナ以降テレワークを実施したが、現在は取りやめた企業」が調査対象の26.78%になります。「現在実施している」の31.02%を考慮すれば約半減です。

 この2つの調査は、対象が異なるため数値を単純比較することは適切でないかもしれません。しかし傾向値として、企業のテレワーク実施率は、コロナ禍の前が20%、緊急事態宣言が中60%(3倍程度増加)、解除後は30%(減少傾向)と、とらえられるのではないでしょうか。

分析のための分析ではなく、事業の方向性を見極める分析なので、傾向値やざっくりとした数値がわかればいいので、このぐらいでいいのです。

似たようなデータを複数組み合わせる技はよく使います。自社製品の市場占有率や市場規模は、だいたいいつもこんな感じで出してます。

この例のように、すべて似たデータが有るわけでないので、製品単価の割合や妥当と思わっる仮説%を使うこともあります。

いずれにせよ、マーケットがざっくりどのくらいあるのか、1億なのか、10億なのか、50億なのかを理解するための分析です。そこまで正確性を求めるものではありません。

どのニーズ?=ペルソナのニーズ把握

ペルソナのニーズを想定し、自社製品/サービスのどの機能や特徴がマッチするかを考えます。ここでも”マッチするかを考える”のであって、”調べる”のではないことに注意が必要です。

「ニーズはXXです!」といった資料やデータは大抵の場合、存在しません。論理的に「XXなので、YYはほしいはず、あると嬉しいはず」と推論します。

逆に「YYがあっても、ZZがないと買ってくれないよな~」というペルソナがネガティブに思うだろうことも想定しておきます。後に実施する、詳細分析の想定データとして使うためです。

要するに、ペルソナをイメージして、自社の製品/サービスの複数機能とマッチングさせてみます。複数のケースをイメージしてみます。

ペルソナだけを「詳細に想定(年齢、性別、学歴、年収等々)する」と、書かれている書籍をよく見かけます。

しかし、やはり、ここでも、マーケットフレーム・フローの一環、One of partsとして、今後分析や評価を意識した仮説検証を行いながら、ペルソナ把握を実施することが重要だと思います。

ちなみに、調査データがある場合は、想定よりもデータ優先です。直接的、間接的でもデータの方が、自分のベクトルや恣意性が入らないため信頼性が高いと言えます。

多くのケースで調査データは存在しないので、想定を前面押しで書いてしまっていますが、念の為の注意です。

相対的価値は?=妥当価格

直接的表現にすると、「では、いくならなら買ってくれますか?」です。

ポーター教授は、プレミア価格、ディスカウント価格と書いていますが、売ろうとしている製品/サービスは、必ず似た競合製品/サービスと比較されます。その比較においての価格を想定する必要があります。

また、想定している「顧客」、「ペルソナ」が、その金額を払えるか、その金額で買ってくれるか、も考慮する必要があります。想定している顧客の妥当金額感も想定しておく必要があります。

ここでも「調査」すると書きたいところなのですが、この分析項目についても、おそらく調査データは存在しません。推察して想定する必要があるでしょう。

当然のことならがら、データが存在すれば、そちら優先です!

雑感

ポーター教授の本では、SWOTというキーワードはネガティブワードとして登場しますが、3Cは単語としても登場していません。

ですが、これはまさしく3CのCustomer分析を考え方を示したものになります。具体的な事例とともに解説がなされているので、読むとインスピレーションを多く与えてくれます。

あえて欠点を述べるとすると、精緻な分析ベースで論旨が展開されるため、やはり学術研究的な側面は拭えず、読んでて「なるほど」と思います。

しかし、マーケティング初心者にとっては、「具体的にどうする?」に落とし込むのは少々難しいかな、とも思います。直接的なやり方は書いていないので。。

そのインタープリターになるのがボクなのかな?とも思います。
自分が理解した内容をステップ毎に体系化することが得意なので。

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